無彩の季節 by廖化
トレーラーハウスの隣に止められたあいつの車。・・の向こうに黄色の単車とオレンジのバギー。え?ジュンと甚平のやつ、どうしてここに来ているんだ? トレーラーの窓を見上げると、はしこいチビの顔がのぞいた。
「え、うっそぉ、兄貴なんでここにいるんだよぉ?」
ドアを開けて甚平が飛び出してきた。
その後ろからのっそりと大きな体が現れた。
「おい、健が来ちまったぞぃ。」
な・・竜もいたのか?
「やだ、うちに集まったんじゃ健にバレるからと思ってわざわざ場所をかえたのに。」
ジュンが緑の瞳を見開いている。
なんだ?俺に内緒でみんなで何をたくらんでいるんだ?
「おい、ジョー、どーする?」
竜が振り返って中に声をかけた。
・・しょうがねぇなぁ・・
あいつが奥から出てくる。小首を傾げて、目を少し眇めて、口元に独特の笑いを浮かべて。
ほら、もうすぐ開いたドアへ姿を現す・・
あいつを見ようと見開いた俺の目に映ったのは、いつもの自分の部屋だった。
室内は既にうす明るくなっている。
・・今のは?・・
俺はベッドから出るとカーテンを開けた。彼方に建築中のビルの骨組みが見えた。
ブラックホール作戦による地震でユートランドの街も大きな被害を受けた。
俺の飛行場の滑走路には幾筋もの亀裂が走り、スナックJは建物は無事だったものの店の中は目茶苦茶だった。竜のヨットハーバーも何艘かのヨットが流された。セントラルパークの隣のサーキット場は燃料施設に引火・炎上したそうだ。周囲もひどく焼けて、俺達はそこの駐車場にあったはずのあいつのトレーラーハウスをついに見つけ出すことができなかった。
どこどこで花が咲いただの、渡り鳥が飛び立っただのというニュースも耳に入る。街は再生され季節も確実に移り変わっていく。それなのに、時の流れに乗り切れない自分がいる。
ふいに滲んだ視界を両手で覆った。誰が見ているわけでもないのに、と苦笑が浮かぶ。
そしてあいつに言ってやる。
‘夢の中でくらい顔をみせやがれ’と。
END

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