ジョージがいなくなってから何年たっただろうか?
アランは時々こうしてジョージの墓に花を供えに来るのだが、そのたびにジョージはここにはいないんじゃないかと思っていた。
それは両親の墓と離れてこんなところにポツンと埋葬されているのが何よりも不自然だったからだ。
通い慣れたタイル敷きの階段を上がって教会に戻るとヴィターリ神父が礼拝堂の入り口に立ってアランを迎えてくれた。
「お客さんがみえているよ。いま懺悔室にいる」
そう言うと神父はアランと入れ替わりに礼拝堂を出て行った。
「チョコレートを作ったの。食べて」
アランが懺悔室に入るや否や、ソフィアは小さな箱を差し出した。
「ギャラクターの家の子のものなんか食べないよ」
アランがそう突っぱねるとソフィアは悲しそうな顔で
「私、アランのお嫁さんになりたいのに」と小さな声でつぶやいた。
「わかったよ、ソフィア。君がギャラクターをやめるというなら考えるさ。でもそういうわけにはいかないだろう?今だってこうしてこっそりと懺悔に・・」
「できるわ!」
ソフィアは今度は大きな声でそう叫ぶとチョコレートの箱をアランに投げつけて懺悔室を飛び出して行ってしまった。
赤いハート型の小さな箱を結んでいたピンク色のリボンがほどけてチョコレートがアランの服の上にこぼれた。
アランはそれを拾うと口に入れた。
ジャリジャリっと音がして砂糖の甘さが口いっぱいに広がった。
ギャラクターがこの世から消えればソフィアと結婚できて、もしかしたらジョージともまた会えるかもしれない・・。
ふとそんなことを考えたアランだったが、それは不可能なことさと小さくかぶりを振った。
(おわり)

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