昇れるか?
耳元で誰かの声がした
うっすら目を開けてみると倒れている俺のすぐそばに俺が立っていた
自分の声だったのか
おい、そこにいるジョー。まだ俺から離れるんじゃねぇよ
俺にはまだやることがあるんだ
カッツェの野郎はもう俺が死んだと思っているだろう
いや、生きていたとしてももう身体を動かすことができないと思っているはずだ
だからこんなところに置きっ放しにしてどっかへ行ってしまったんだ
あそこにさっきゴッドフェニックスが映っていたモニターがあるが今は何も映っていない
いわゆる砂嵐ってやつだ
あれは幻だったのだろうか?
いや違う
ふっ、残念だったな。カッツェ
俺はこれから這いつくばってでもこの本部の入り口を健に・・いや、ガッチャマンに教えに行くぜ
どうしてここがわかったか知らねぇが流石だぜ、健
外ではここの入り口を探して暴れ回っているんだろうなぁ。今すぐ行くからな、待ってろよ
俺もこの前、暴れてやったんだぜ
もうちょっとのところでめまいに邪魔されたがな
だが、あの時分かったんだ
とことん身体を痛めつけられたときにアドレナリンがいつも以上に俺の身体を充たすってことがな
なんていったって俺はあのギャラクターの子だからな
小さいころにそういう風に育てられたのかも知れねぇ
あぁ、わかるぜ。アドレナリン・・この感じだ
手も足も動きやがる。目も見える
ざまぁみろってんだ
さっきは外したが今度は必ずカッツェの眉間に残しておいた最後の羽根手裏剣を一本ぶちこんでやる
ここだ
この階段を昇りきったところが入り口だ
昇れるか?
思いっきり手を伸ばしたつもりがぬるりと生暖かいものが手指に絡んでいて上手く階段のへりに手がかからねぇ
くそう
目が霞んできちっまってよく見えねぇが手が真っ赤に染まっている
ちぇ、もう俺の中の血は全て出つくしたと思っていたのに、まだ残っていたらしい
あっ、しまった
雑魚どもをなんとかかわせたのはよかったが、これじゃぁ振り出しに戻っちまうじゃねぇか
いつの間にか身体がずいぶんと重たくなっちまった
軽い身のこなしが信条だったコンドルのジョーさまが泣くってもんだ
あの夕日が当たるアパートの階段
覚えているぜ
あの時のめまいは普通じゃなかったからな
だがまだあの時は身体が動いたぜ
だからまだまだ大丈夫だって思えたんだ
あのおばさん、どうしているかなぁ
息子が帰って来るって言っていたっけ
どんなやつか知らねぇが、母親に心配かけるなんてとんでもねぇやつだ
一度会ってブッ飛ばしてやりたかったぜ
ん?頬に冷たい空気が当たる
外へ出られるぞ
もう少しだ

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