「お兄ちゃん・・。ねぇ、ジョージお兄ちゃんってば」
肩を揺さぶられたような気がしてジョーはうっすらと目を開けた。
「どこだ?ここは」
そして俺の本名を呼ぶ奴は誰だ?
もっと目を開けようとしたが、まぶしくてまた目を閉じてしまった。
「僕だよ、お兄ちゃん。弟のジャックだよ」
ジョーは目を閉じたままふっと笑った。
「俺に弟はいないぜ。弟みたいな奴はいたがな」
そう言おうとしたが、声が出なかった。それに身体が思うように動かない
「そうか、お兄ちゃんは知らないよね。僕、10年前にママと一緒に死んじゃったんだ。あの時はまだママのお腹の中にいてさ」
「な、なにっ!?」
今度こそ目が開(あ)いてまわりの様子が少しわかった。
どうやら冷たくて硬い床の上に横たわっているようだ。
頭を少し持ち上げるとひどく痛んだが向こう側の壁に何か光るものが見える。
「痛ててっ・・」
灰青色の目を凝らしてみると数字が書いてあるシリンダーのようなものが壁いっぱいの装置に埋め込まれて光を放っている。
あ・れ・は・・?
「こっ・・ここは!・・ここはギャラクターの本部だ!!」
我に返ったジョーは思わず身体を起こそうとしたが激痛が全身をめぐり、反射的に身体をひねるとうつ伏せになった。
「うっ・・くそっ」
血だまりで身体がぬるりと滑った。
「おい、ジャック!どこにいる?出てきて兄貴の危機を救ってくれよ」
まわりはしんと静まり返っていた。
「ちぇ、あれは夢だったのか。ならここでゆっくりと眠らせてもらおうか」
ジョーが目を閉じようとするとまたジャックの声が聞こえた。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんはここの入り口を知らせに地上へ出なくちゃ」
「いや、もう身体が動かねぇんだ。お前が代わりに行ってくれねぇか?」
「ダメだよ。あの時、天国の入り口で、大天使様と約束したじゃない。地球が消えそうになった時に命に代えても地球を救うってさ。それでみんなで天国へ昇ろうとしていたけどお兄ちゃんだけ地上に還されたんじゃないか」
弟の凛とした声は耳ではなくジョーの頭の中に直接響いているようだった。その言葉に押されるようにジョーは重い身体を動かし始めた。
「わかったよ。俺はこれから地上へ行くぜ。だがな、ジャック。あの機械は止められないぜ」
「大丈夫だよ、お兄ちゃん。あの機械はそのうち止まるよ」
「そうかな?」
「そうだよ。さっきカッツェに投げた羽根手裏剣が外れて機械の中へ入っていったでしょ」
「あ?あぁ・・」
「あれがそのうち装置の中の歯車に挟まって機械を壊すんだ」
「そうかい。わかった、わかったよ」
「ホントに分かったかなぁ」
すでにジョーは外へ出ることだけを考えていてジャックの声は耳に入らなくなっていた。
「ここだ」
ジョーはゆっくりと階段の一段目に手をかけた
(おわり)
