ジョーはまだ隣りで寝息を立てている
キョーコはそっとベッドを抜け出してトレーラーの奥にあるキッチンへ向かうとクーラーボックスを開けた。
昨夕、コンビニでいろいろ買い込んだ時に二人の故郷の名前が付いたジェラードを見つけてここにしまっておいたのだ。
カップの蓋を取ると何とも言えないレモンの良い香りがしてキョーコは幼い頃を過ごした自宅の庭をふっと思い出した
その時だ。
思いがけず後ろから抱きつかれた。
「あ」
落としそうになったジェラードのカップと右手に持っていたスプーンを奪われた。
「抜けがけは許せねぇな」
そう言うとジョーはキョーコの頭の上でパクリとジェラードを口へ運んだ
「あーん、私にも・・」
腕を上に伸ばしたキョーコの身体からシーツが落ちた
「そんな格好でジェラードを食ったら風邪ひくぜ」
ジョーのふたくち目の言葉だ
「ジョーだって同じ格好じゃない!」
「俺は日ごろから鍛えているから大丈夫さ」
ジョーの口角が得意げに上がる。
だが次の瞬間
「はーっくしょん!」
ジョーはくしゃみをした。
「ほら、ごらんなさい」
シーツを巻き直したキョーコはジョーからカップを奪い返すとゆっくりとジェラードをほおばった。
「あー、酸っぱい。でも美味しい!」
(おかしいな。急に鼻がムズムズしたぞ)
「キョーコ、おめぇ、まさかまた何かしやがったか?」
キョーコはそれには答えずにスプーンに乗せたジェラードをジョーの口元へ近づけた
「はい、あーん」
ジョーはスプーンに顔を近づけたがそれを咥えるべき口唇であっという間にキョーコの口唇を奪った
「ジョー・・」
「へんな小細工しやがって」
フフッとキョーコが微笑んだ
「なんだよ」
「レモンの味がした・・」
「おめぇもな」
それから二人は食べかけのジェラードが溶けるのも構わず再びベッドへ潜り込んだのだった
(おしまい)
