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夜の坂道

「絶対に離さないでね」
中古のママチャリにまたがった淳はまっすぐ前を見据えてはいたが思いっきり肩に力が入っているのが薄暗い街灯の下でも見てとれる。
18回目の誕生日までに自転車に乗れるようになるんだと1週間前から特訓してきたのだが、もうすぐその誕生日も終わる。
一緒に誕生日を祝おうと淳の家に来たジョーだったが、一緒に映画を見に行くという約束も振られてとうとうこうして一日中自転車の後ろを持たされていた。
「わかってるって、淳。行くぜ!」
そう言うとジョーは夜の坂道の上から淳が乗っている自転車を思い切り押した。

「きゃぁあああぁぁあああ~~~~!!!」

淳の雄叫びとともにママチャリが夜の闇の中に消えて行った。
「じゅ~~~~~ん!!」
さすがのジョーも心配になったのかものすごいスピードでジュンの後を追った。
「ど、何処だ?淳?!」
坂を下りきったT字路のつきあたりでジョーはあたりを見回した。
「ここよ、ジョー」
淳は突きあたりの生け垣の中にママチャリとともに「埋まって」いた。
「やったな、淳。」
右手を差し出すジョー。
「ええ、やったわ。ジョー」
その手をとる淳。

淳はその腕の中で灰青色の瞳が自分だけを見つめているのに気づいた。
そして次の瞬間、二人の唇が重なったのだった。

「お誕生日おめでとう、淳・・」

(おわり)




があわいこさんは、「夜の坂道」で登場人物が「振られる」、「誕生日」という単語を使ったお話を考えて下さい。

・・というお題をいただいていたので誰かのお誕生日に書いてみようかと思っていたらちょうど朝倉 淳さんのお誕生日が近かったので、書いてみました。

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深夜のベランダ

ごんごんっ!

窓を叩く音に私は飛び起きてカーテンを開けた。
ガラスの向こうで灰青色の鋭い瞳が深夜のベランダからこちらを見つめている。

「なぁに?こんな時間に・・」
「ミルク、ないか?」
そう言う彼の腕にはトレーラーに迷い込んできたという生まれたばかりの小さな子猫がうずくまっていた。




があわいこさんは、「深夜のベランダ」で登場人物が「見つめる」、「猫」という単語を使ったお話を考えて下さい。

というお題で書きました。
ジョーはガッチャマンのコンドルのジョーですが、女性の方はキョーコとは特定していません。

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深夜の図書館

遅番のバイトが終わった帰りに近道をしようと私は真っ暗な深夜の図書館前を通り過ぎやっとの思いで自宅アパートにたどり着いた。
だが、その玄関ドアの前にはあの人が先回りしていた。

「なんで私につきまとうのよ」
好奇心をくすぐられてついつい口をきいてしまった私。
「おめぇの黒子(ホクロ)の数を数えてみたくてよ」

へぇ。若いくせに言うじゃない。




があわいこさんは、「深夜の図書館」で登場人物が「くすぐる」、「黒子」という単語を使ったお話を考えて下さい。

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一日遅れのバレンタインデー

「ちぇ。何だってあんなに楽しそうなんだ?ジュンのやつ。」
臨時休業の貼り紙がしてあるスナックジュンの店内には先ほどからチョコレートのいい香りが立ち込めていた。
カウンターの中ではジュンが甚平にアドバイスされながらチョコレートを湯煎にかけているのだ。

「おねえちゃん、もう少し手早くかき混ぜないと熱くなりすぎるぜ。」
「うるさいわね、甚平。早くしたら回りに飛び散ってしまうじゃない?!」
「不器用だな、へったくそ!」
「なんですって!?」
「あー、もういいから。こんどは型に流し込もうぜ。」
「んっ、もう~っ。」
いつもながらの姉弟ゲンカをカウンターに座って見ている健だったがちょっと不機嫌なのにはわけがあった。

「墓参りにチョコレートなんて聞いた覚えが無いぜ。」

ジョーが去ってから甚平はあのブーメランをお守り代わりにずっと持っていた。
だが、久々に南部博士がBC島での学会に出席し、その後ジョーの両親のお墓参りをすることを知るとこのブーメランを一緒に埋葬できないかと聞いてきたのだった。
それでいいのかと尋ねる博士に甚平はこう答えた。
「オレ、もう子供じゃないよ。」

「なら、どうだ甚平。一緒にBC島へ行かないかね?」
「あ~、でもスナックジュンは・・?」
「ジュンも一緒に、店は臨時休業にすればいい。」
「わ~い、博士。さっそくおねえちゃんに言ってみるよ。」

こうして話はトントン拍子に進んだ。
学会の終わる日が2月13日ということだったのでチョコを持っていき、14日のバレンタインデーにお墓参りをしようということになったのだった。

「ケン、ケンってば。」
考え事をしていた健はジュンが話しかけているのにやっと気がついた。
「ああ・・。」
「『ああ』じゃないでしょ?ケン。ケンは行かないの?BC島。」

(おまえがジョーの墓にチョコをお供えしてるとこなんか見たくないぜ。)
そう、健は心の中でつぶやいた。だが、
「あぁ、オレちょっと用事を思い出した。またな。」
そう言って健はスナックジュンを後にした。

「変なケン・・・。」
その後姿を見送ると、指にくっついたチョコを味見しながらジュンはつぶやいた。


とうとう健はBC島へ行かなかった。
臨時のエアメールを届ける用事ができたとみえみえのウソをついて見送りにも来なかったのだ。
父親と遠洋漁業に出かけている竜からさえみんなによろしくとの電報が届いたというのに。


15日の夜になってようやく健は自分の飛行場へ帰ってきた。
愛機のそばに誰かが立っているような気がして、目を凝らして見たが誰もいなかった。
「オヤジ?・・今、お参りしてきたところじゃないか・・。」

そう独り言をいいながら、いつものようにドアが開けっ放しになっている部屋へ入っていった。
すると薄明かりの中、テーブルの上に何かが置いてあるのがわかった。
急いで明かりをつけてみると、それはピンク色のリボンがかかった小さな箱だった。
添えてある手紙を開くとこう書いてあった。

『ケン、おかえりなさい。
BC島は暖かくて本当にいいところだったわ。
あの教会もアラン神父の教え子たちがりっぱに建て直して美しく生まれ変わっていました。
あの忌まわしい出来事がウソのようです。

この包みはジョーのお墓参りの時にケンに渡そうと思っていたけれど、できなくて残念でした。
2つともジョーにあげてこようかと思ったけど、甚平が「ど~せアニキのとこはカギなんかかけちゃいないだろうから置いてきちゃいなよ。」
というのでそうすることにしました。
ジュンより』

健がフフンと鼻先で笑い、その包みを開けようとしたときだった。
どこからともなく飛んできたアメリカンクラッカーが健の手首に絡みついた。
そして次の瞬間今度はヨーヨーがその包みを健の手から奪っていった。

「へへんだ。アニキ、油断したね。」
開いたままだったドアのところにいつ来たのか甚平とジュンがニッコリ笑って立っていた。
「おねえちゃん、なにやってんだよ。もう一回ちゃ~んと渡すんだろ。」
「え?も、もういいわよ。一日過ぎちゃったし・・。」
甚平が今度は健に向かって言った。
「アニキもアニキだぜ。なんでこういう大事な時にヘソを曲げるかねぇ?」
「オ、オレは・・。」
(オレの分のチョコもあるなら何でそう言ってくれなかった?)
そう言おうとしたが健は言葉を飲み込んだ。

甚平はズボンの脇のジッパーをあけるとクラッカーを丁寧にしまいながら言った。
「オ、オレはさ、帰るよ。しばらく店を休んじまったろ。明日の仕込みをしなくちゃ。」
そしてさらに続けた。
「じゃ、アニキ。おねえちゃんをよろしくな。おねえちゃん、かえって邪魔になるから店には帰ってこなくていいぜ。」
「まっ、生意気言って。甚平ったら・・。」
ジュンはそう言って去っていく甚平の後姿を見送ったが、追いかけていくことはせずに健のほうへ向きなおると包みをヨーヨーの吸盤からはずした。
そして、それをまっすぐに健に差し出したのだ。

しばらくして、健の部屋の明かりは消えた。

その様子を物かげから見ていた甚平はジョーの遺言を思い出していた。
『・・・ジュン、健と仲良くな。』

「まったく人騒がせだよ。あの二人は。」そうつぶやくと甚平はスナックジュンへと帰っていったのだった。

(終わり)

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復讐するは我にあり

   婚約者が死んでしまったその年のクリスマスにアランは牧師から神父へと改宗した。
生涯を共にできる人はソフィア以外にいないと思ったからだ。
もう一生誰とも結婚を考えることはないだろう。ならばいっそのこと生涯を神にささげようと決心したのだ。

 実はアランはもともと神父になろうと修業を重ねていた。
十年も前のことだが、突然遊び友達だったジョージが死んだと聞かされてからというものアランの荒れようといったらそれはひどいもので、とうとう未成年者ながら逮捕されてしまったのだ。
そのとき、身元引受人をかって出てくれたのが神父だった。
アランは教会の修道僧として将来の神父を目指し、教会に住み込みで働き始めた。

 そんなある日の夜も更けた頃、アランはろうそく一本の灯かりを頼りに礼拝堂の掃除をしていた。
本来なら昼の間にやっておくのだが、その日は神父とともにブドウの収穫を手伝いに行っていてできなかったのだ。
すると、そっと礼拝堂のドアが開いて誰かが入ってきた。
「どなたかね?」
アランはちょっとだけ神父の真似をして言ってみた。
するとその人影は懺悔室へと音もなく入っていった。
アランは神父へ連絡しようかと思ったが、好奇心から自分がそこへ入ってしまった。

「神父さま。」
その声は聞き覚えのある少女だった。

「ソフィア、ソフィアじゃないか。どうしたんだ?今頃。」
驚いたソフィアは顔を上げて仕切りの向こうにいるアランの顔をじっと見つめた。
「あ、アラン・・?」
逃げ出すかと思ったソフィアは意外にもホッとしたような顔で金網の向こうのアランに話し始めた。
「私、ギャラクターを抜け出したいの。でも一人では何もできない。パパもママもギャラクターだから、私だけが抜け出すことなんてできないわ。」
そんなソフィアにアランは自分の気持ちがしっかりしているのなら当たって砕けろ、上司にあたる女隊長さんとやらに直訴してみたらどうだ、きっと神様が守ってくださると言って励ましたのだった。

 それからというものソフィアは夜になると毎日のようにアランの元へ「懺悔」にやって来た。
それに気づいた神父が問いただすと、アランはこれまでのいきさつを話し、ソフィアの力になってやりたいのだと熱く語った。
神父はアランとソフィアが愛し合っており、すでに男女の関係になっていることを察知した。
そして、どうしてもソフィアを守りたいのなら神父ではなく牧師になって彼女と結婚するべきだとアドバイスしたのだった。


 季節風と近くを流れる寒流のおかげで狭い島ながらそこだけは夏でも冷たい風が吹いて島民の間で避暑地として使われていた海岸。
そこは10年近く前、ジョージが両親とともに銃殺されたと聞いたところだ。
アランはそこにソフィアと一緒に暮らすための小さな牧師館を建てようとしていた。
自分がここにいたらジョージがひょっこりと還って来るような気がしたからだ。

 小さいが誰でも訪ねて来られる明るい教会を作りたい。
貧しい家の子供たちを集めて文字を教え、聖書や他の本を読めるようにしてやりたい。
そうアランは将来の夢をソフィアに語った。

 ソフィアもアランの言う通りに女隊長にギャラクターを抜けたいと直訴していた。
恋する女に怖いものはない。
ソフィアの申し出に女隊長はある条件を出してきた。
そして、ソフィアはためらわずにそれを承諾したのだった。

「本当に大丈夫なのか?」
心配するアランにソフィアは微笑んで応えた。
「えぇ。女隊長が約束してくれたわ。これが最後の仕事だって。私はお母さんに教えてもらった技があるの。だれにも負けやしないわ。」
「そうか。頑張るんだよ、ソフィア。」
アランはソフィアの小さな肩を抱いた。

 ソフィアがその最後だという仕事に出かける前の日に二人は出来上がったばかりの小さな『自分たちの』教会で婚約式を行なった。
これからは二人でともに分かち合い、生きていくのだ。
誰が見てもお似合いの二人だった。
ソフィアが仕事から帰ってきたらすぐに結婚しよう。
そしてこれから二人で幸せになろう。二人の未来はまさにバラ色に輝いて見えた。



「アラン、アラン・フェリーニさんですね。」
婚約式の日から二週間ほどたったある土曜日の夕方、明日の礼拝の準備をしているアランの元を背の高い女性が訪れた。
金髪の長い髪を耳の横で束ねている。
「はい、アランは私ですが。」
「2号・・いえ、ソフィア・モンレールさんのことでお話が・・。」
「・・!・・。」

アランのいやな予感は的中した。

 ソフィアが死んだと事務的な口調で告げる女にアランはそんなことは信じないと言い張ることしかできなかった。
だが、さらにその女は冷たく言い放った。

「私はちゃんと見ていたのですよ。ソフィアは私どもの組織から抜けたがっていまして、これが最後の仕事になるはずでした。科学忍者隊のコンドルのジョーを捕まえてしまえば彼女は自由の身。あなたと結婚するのを楽しみにしていましたのにねぇ。」
「科学忍者隊?コンドルのジョー?」
「そうです。ソフィアはコンドルのジョーを捕まえようとして逆に捕まったのです。『私を許して逃がして欲しい』と懇願する彼女の胸めがけてジョーは羽根手裏剣を撃ち込んだのです。」
「なんだって?!」
「血も涙もない冷酷な人間ですわ。コンドルのジョーは。」
女は耳の下で髪を束ねている星型の飾りに手をやりながらそう吐き捨てるように言った。
「もういい。帰ってくれ。」

 ギャラクターの女隊長は、アランの言葉を聞くと冷たい微笑を浮かべ
「わかりました。では帰らせていただきますわ。」
そう人ごとのようにつぶやいて牧師館から去っていった。

「ソフィア・・。」
人間というのはあまりにも悲しいと涙が出ないというがまさにアランがそうだった。
ただ、「ソフィアは科学忍者隊のコンドルのジョーに殺された・・」
そう何度もつぶやくのだった。

 その次の日、アランの小さな教会では日曜礼拝が行われなかった。
そしてその夜、教会から海へと向かって歩く人影があった。
アランの身体は胸まで海につかり、大きな波がアランを呑み込みそうになる。
もうすぐ脚が立たなくなるだろう。

「・・アラーーン・・」
どこからか自分を呼ぶ声がする。
もしかして・・ジョージ・・?・・お前なのか・・?

 その時アランはガシッと強い力で抱きかかえられた。
「アラン、何をしているんだ?」
「し、神父さま・・!?」
朦朧とした意識がハッと戻った。

「ソフィアが亡くなったと聞いてお悔みを言おうと訪ねてみたら、今日の日曜礼拝がなかったというじゃないか。それで心配になって探しに来たのだよ。」
懸命に走ってきたのだろう、神父は荒い息づかいの中で休み休みそう言葉をつなげた。

「私の名前を呼んでいたのは神父さまだったのですね。」
「ああ。間に合ってよかった。」
ポンと神父に肩をたたかれて、アランははじめて声をあげて泣いた。
「うぅ・・うわーーっ・・」
 頭一つも神父より大きなアランが小さな子供のように神父にすがりついて嗚咽を漏らした。
暗い夜の海で二人はずぶぬれだった。
「そうだ。思いっきり泣くがいい、アラン。ここなら波の音がすべてを消し去ってくれる。」
神父はアランを抱きとめ、その背中をなだめるように優しく叩いた。
「自らの命を絶つということは神に逆らうことだ。もし死にたいのなら・・」
「死にたいなら・・?」
「・・殺してもらうしかない・・。」
「殺して?」
アランは神父の意外な言葉に驚いてほの暗い月明かりの中でその顔を見なおした。
 神父はふっと息を吐くと沖合いを見つめながら続ける。
「私だって人間だ。死にたいと思ったこともある。誰かライフルで私を撃ってくれないかとさえ思うほどにね。」
神父のような人でもそんな風に思うことがあるのか・・。それとも自分を励まそうとしてこんな話を・・?

 神父はアランの両肩に手をやると
「だが、君はまだやることがある。子供たちが君に勉強を教わりたいと待っているじゃないか?」
そう言いながらアランの身体を揺さぶった。

 そして今度はアランの手を取り片方の手でその手の甲を軽く叩きながら
「君は新約聖書、ローマ人への手紙、第12章第19節を知っているね。」
そう問いかけてきた。
「はい、神父さま。」
「言ってごらん。」
「あ・・愛する者よ、自ら復讐するな、ただ神の怒りに任せまつれ。(しる)して『主いい給う。復讐するは我にあり、我これを報いん』・・。」
 神父はもう一度、アランの顔を見た。
「教会学校の子供たちにはわかりやすく言ってやらねばならんよ。さて、なんと言う?」
アランも神父の顔をじっと見つめて言った。
「愛する者たちよ、自分で復讐しないで、むしろ、神の怒りに任せなさい。なぜならば、「主が言われる。復讐は、わたしのすることである、わたし自身が報復する」と書いているからである。」

「うん、うん・・。」
神父は眉を寄せ、目を細めると何度もうなずいた。

その後、二人は無言で海からあがると、牧師館へと消えていった。

THE END

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