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「・・っひっく、ぁあ・・。」
季節外れの台風が去った秋の夜。
ジョーはやっとトレーラーに帰って来た。
「おかえり、もう雨はやんだみたいね。半そでで寒くなかった?」
その声にジョーは酔いからいっぺんに醒めた。
「キ、キョーコ!おめぇいつの間に?」
「え?先に帰ってろって言ったじゃない。」
キョーコはベッドの真ん中に座って口をとがらせている。
(しまった。キョーコには場所を教えなくてもトレーラーがどこに置いてあるかわかっちまうんだった。)
と、その時だった。
トレーラーのドアがノックされた。
「だれだ?」
ジョーは眉間にしわを寄せ、するどい目つきをキョーコに向けた。
キョーコは黙って首を横に振った。
「見えているんだろ、教えろよ。」
ジョーはますます険しい目でキョーコを睨む。
しかし、「教えない。私を路頭に迷わせようとしたお返し。」
とキョーコに言われて
「それは・・」と、ジョーは返す言葉がない。
酔った勢いでキョーコのことを適当にあしらおうとしたのは事実だ。
親しき仲にも礼儀ありっていうことか。
「それは?」
今度はキョーコがジョーの瞳を覗きこむ。
ギャラクターの幹部でさえ震え上がるジョーの睨みも今夜のキョーコには通じない。
少し間があってまたドアがノックされる。
フッとキョーコの頬が緩んだ。
「子どもよ。小さな子が二人で・・。お菓子をもらいに来たんだわ。」
「はぁ?」
ジョーの頭の中に疑問符がたくさん浮かんだのが見えるようだった。
(これはさすがのキョーコにも見えないはずだが。)
キョーコは仕切りドアを開けて奥のキッチンからフライパンに乗ったクッキーを出してきた。
「ここはオーブンがないから、こんなのしか作れなかったけど。」
そういって、それをカボチャの絵が描いてある紙袋に入れるとジョーにウィンクしてドアを開けるようにいった。
「トリック、オア、トリート?!」
「うわっ!」
入って来たのはドラキュラとフランケンシュタインだった。
ジョーは思わず後ろへ跳び退くとベッドの上に乗って羽根手裏剣を出した。
「だめよ、ジョー!」
キョーコが叫んだので子どもたちはビクッとして入り口で固まってしまった。
「あ、あ、あ・・ごめんね。」
キョーコはハロウインの仮装をしてお菓子をもらいに来た子どもたちに謝ると、クッキーの入った袋を渡した。
「はい、ハッピー・ハロウィーン!」
「ハッピー・ハロウィーン!」
子どもたちは口々にそう答えるとクッキーを受け取って帰って行った。
「なんだ?ありゃ。」
ジョーはまだベッドの上にいた。
「だから、ハロウィンだってば。」
「へ、ハロウィンってのは今夜みてぇに飲んで騒いだ後に、そこで知り合った子と・・。」
「え?」
(いけねぇ。)
「誰がそんなことをしたのか・し・ら?」
ジョーはキョーコに詰め寄られて落ちるようにベッドから降りた。
だが、すかさずキョーコに抱きつかれてそのままベッドに倒れこんだ。
「トリック、オア、トリート?ジョー。」
「お、俺・・。お菓子は持っていないぜ。」
「じゃ、トリック~~~ッ!!」
キョーコは思い切りジョーの耳に息を吹きかけた。
「わ~っ。キョーコ、やめてくれ~!」
ジョーは長い脚をばたつかせたが、全身から力が抜けていき、首に絡みついたキョーコの腕を振り払うことはできなかった。
「やめな~い。私にジョーのスイート(お菓子)をたっぷりと食べさせてくれるまで、やめな~い。」
「う゛~~っ。」
こうして二人のハロウィンの夜は更けていった。
(おわり)
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