忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

誘われて


誘われて    by 廖化

スナックジュンで夕食を済ませ、他愛の無いおしゃべりを交わして店を出たところで、健がジョーにそっと声を掛けた。
「これからうちに来ないか?」
「? かまわないが?」
答えながらジョーは軽く眉を寄せた。
健がわざわざ自分を家に呼ぶとは何の用件だろう?
「J」では話せないことなのだろうとは予測が付くが?そういえば今日は食事中も健の視線を感じていたような気がする。
何か悩み事でも?それにしては深刻そうにも見えないが? 

健が単車で、ジョーが愛車で健の家に着くと、健はおもむろにDVDのディスクを出して再生機に入れた。
「そいつは何だ?」
「友達から借りたんだけれど、ちょっと面白いところがあってお前に見せたくなってな。」
何だ、悩み事って言う訳ではなかったんだ、とジョーは安心した。
「映画か?」
「ん~、なんていうのかな、そのぉ、つまり・・、今風に言うとBL?」
「ああ?」
ジョーは口を開けたまま固まった。BLっていうのは、男同士の恋愛モノだろ? 
ノンケの健がBLで面白いってどういうことだ?
おまけに俺に見せたいだと?それよりその種のDVDを健に貸す友達ってのは一体どいつだ~~! 
まさかそいつは健を狙って・・? 等々、ジョーの頭の中を次々と疑問符付きの文がが駆け巡った。

まぁ、いつぞやサーキットの仲間達と同様のDVDを見ていたとき『これ撮っている場所が俺の故郷の近くで、なんだか懐かしくて繰り返し見てしまうんだよな。』なんて言っていた奴もいたし、そんな類なのだろうか? 

ほら、と健から投げられた缶コーヒーを受け取ると、ジョーは年代物のテレビの前に座った。隣に腰を下ろした健が、リモコンで再生を開始した。
(確かに「J」でこの話題は無理だよな、竜はともかくジュンや甚平には聞かせられねぇぜ)
 
ジョーはコーヒーをすすりながらぼんやりと画面を見つめた。
スポーツジムで知り合った二人の青年が次第に惹かれあうという、別になんていうことのないストーリーだ。風景にも取り立てて珍しいところがあるわけでもなく、どこに健が興味を持ったのか ジョーには皆目判らなかった。
が、見進めるうちにジョーは居心地の悪さを感じ始めた。画面でベッドインの場面が近付いてきたからか、それとも一緒に見ているのが健だから変な照れがあるのか、とも思ったが、どうも違う。
そういや『この手の話で、自分と同じ名前が使われていると妙に照れるよな。』と言っていた奴もいたが、出ている登場人物は名前も容姿も自分とは重なる部分は無い。無いが・・?
「!!」
 
ジョーは咄嗟にリモコンに手を伸ばした。その手を健がすばやく抑える。
「何をする気だ?」
「再生を止めるんだよ!」
「どうして?ここからが見せたいところなのに。」
「うるせえ!これ以上聞いてられるか!さっさと停止ボタンを・・!」
押させろ、待て、と、まるでゴッドフェニックスでの赤いボタンの争奪戦のようなやり取りのあいだもストーリーは進んでゆく。

TV画面に目をやった健が、くすりと笑った。
「この抱かれるほうの俳優の声、お前にそっくりだろう? もう少し聞いてみろよ、お前の『その時』の声が聞けるぜ。」
「馬鹿野郎!」
空になったコーヒーの缶を健に投げつけると、ジョーは健の家を飛び出した。その背中に大笑いする健の声が聞こえてきた。

「あンの野郎ーー!! 今度逆パターンの話を見つけて押し付けてやるからな!」
自宅へと愛車のアクセルを踏み込みながら、妙な対抗心を燃やして決意するジョーだった。

拍手

PR

Sexy voice&the smile "F"


 
南部響子が2009年05月03日 Sayuri Washio Presents GATCHAMAN Fan Fictions' に初掲載した「Sexy voice&the smile "F"」にいただいたイラスト

拍手

Sexy voice&the smile "F"

「へっ、へっ、へっ…。」
ジョーはTシャツを脱ぎ捨てると乱れた前髪をかきあげて向きなおった。

「オレが科学忍者隊だって?」

「そんなにカッコよく見えますか?お客さん。」
「おい、ジョー。さっきからなにやってんだ?」
ここはひょんなことからバーテンダーのバイトをすることになったバー『SAYURI』の従業員用ロッカー室。

鏡の前でポーズを決めてるジョーの隣りで同じようにTシャツを脱いで『SAYURI』の制服に着替えているケンがあきれたようにつぶやいた。

「今夜も、・・来るだろうな。」
「あ? ボロンボ博士か?」

ボロンボ博士が抱いていたケンへの嫌疑は完全に払拭された。
だが、今度は任務中に言葉を交わしていたジョーへとそれは向けられた。
顔はわからずとも声や話し方の特徴が「誰かに」似ていると思ったのだろう。
日頃から研究熱心で知られているボロンボ博士だ。
こういうことにもその性格はいかんなく発揮されるのだった。

「オレが他のお客さんと話していると、そばに寄ってきて聞き耳を立てているんだぜ。」
「ほうっ?!」

「で、つらつら思うによ。」
「あぁ…(お前、リュウの口癖がうつったな。)」
「ボロンボ博士が『あいつは科学忍者隊の一員だ!』とオレを指差す時に備えて、ちょいと予行演習をしてたってわけさ。」

アンダーソン長官と南部博士がふいに現れたときも肝を冷やしたが、カウンターの中でしゃがんだままなんとかやり過ごせた。
だが、日参するボロンボ博士には、そうもいかない。
ジョーはジョーなりに覚悟を決めたらしい。

そして今夜も博士はやって来た。

もしかしたら、博士は今夜その計画を実行に移すかもしれない。
オーダーがいつもの水割りではなくジントニックだ。
これはシンプルなカクテルだが、シンプルであるが故に店やバーテンダーによって微妙な違いが出る。
バーテンダーに話しかける常套手段として用いられることもあるからだ。
ジョーは、マタンガーに一発必中を命じられた時よりも緊張した。

いつものようにケンの周りには、女性客が集まりその一挙手一投足に熱い視線を投げかけていた。
トレンチ(お盆)の扱いもさまになってきたケンは空いたグラスを高々と積んで、軽やかに店内を行き来している。そのダンスをしているかのような動きは「まるで忍者のようだわ」と歓声をあげる者さえ出る始末だ。

一方、ジョーはいつにも増して目つきも鋭くバースプーンを睨みながらシェイカーを振っていた。そしてさらに無口になっていた。
オーダーが入っても返事もせずに作り始めるので先輩のバーテンダーに注意されてしまったくらいだ。

「オレ、今日は洗い場専門でもいいッスか?」
そう先輩バーテンダーに言おうとした時、空のグラスを持ったボロンボ博士がカウンターに近付いてきた。
さっきあれだけ鏡の前で練習したにもかかわらず、ジョーは凍りついたように身体が動かなくなってイヤな汗をかいていた。

と、その時。

「ねぇ~、ジョー。歌ってよ。」

これまた毎日のようにジョーに話しかけてくる女性客が変わったオーダーをしてきた。
先日の『SAYURI』7周年パーティーの時に余興で言われるがままカラオケで歌ったジョーのことが忘れられないらしい。

「い、いや。今日はパーティーじゃないし…。」
と、渋るジョー。
だが、
「ジョーに歌ってほしい人!!」
と、いきなり仲間…いや店中の人に大きな声で挙手を求める彼女に多くのお客が応えた。

ジョーは腹を決めた。
「忍者隊だ!」と指を差されるより、ミーハーな中年女性の相手のほうがよっぽどましだ。

「お客さん、それでリクエストは?」
「そうね~。フランキー・ロンガーのフォー・ユーがいいなぁ。」

フランキー・ロンガーといえば、一世代前の歌手ではあるが、その低音の魅力で一世を風靡した実力派のボーカリストだ。
ボロンボ博士は内心、こんな若造にフランキー・ロンガーが歌えるものかと思っていた。

すぐにカラオケの用意ができると店内の照明が全部落ちてミラーボウルが回転し始めた。
名曲「フォー・ユー」のイントロがかかるとスポットライトに照らしだされたジョーが浮かび上がった。

2009.12.12.

女性客から、悲鳴のような歓声が上がる。
そしてジョーが歌い始めると今度はうっとりとその声に聞き惚れた。
歌が終わるとまたさきほどより大きな歓声と拍手の嵐。

その中でボロンボ博士ははっと気がついた。
「そうか!あのバーテンダーの声。どこかで聞いた声だとずっと気になっていたんだが、フランキー・ロンガーに似ていたんだ。なぁ~んだ。そうかそうか。わかってしまえば、どうということもないな。あぁ、すっきりした。また変なことを言ってオーナーさんに迷惑をかけるところだった。よかったよかった。」
ボロンボ博士は、満足してバー『SAYURI』をあとにしたのだった。

(おわり)

拍手

ぼくらの好きなガッチャマン♪

拍手

ジョーの顔力




拍手

ブログ内検索

Author

があわいこ
詳しいプロフィールはINDEXのリンクからご覧ください

最新コメント

[06/25 があわいこ]
[12/22 があわいこ]
[10/22 があわいこ]
[09/30 があわいこ]
[09/30 朝倉 淳]
[07/24 があわいこ]
[07/23 朝倉 淳]
[06/24 があわいこ]
[06/24 朝倉 淳]
[06/22 があわいこ]

P R