南部博士から与えられた新しい車の性能は素晴らしいものだった。
いや、素晴らし過ぎて怖いくらいだ。
俺の腕をもってしてもコントロールするのに骨が折れる。
まったく博士は何を考えているのか時々わからなくなるぜ。
アメリス国で開催されるの主(おも)だった全てのレースに参加できるように取り計らったからこのストックカーで暴れて来いだと?
ふっ。
上位入賞した賞金は自由に使っていいとも言っていたな。
言ってくれるじゃねぇか。
賞金の使い道はもう決めてある。
前から欲しかったトラベルトレーラーを買うんだ。
博士の別荘も悪くはねぇが、時々妙に居心地が悪くなるんだ。
親父が行方不明とかいうアイツが来たときさ。
そんな時は、部屋を抜け出してこの車の中で眠るのさ。
そして深夜の車内で考えた。
独立するのも悪くねえと。
なぜ博士が俺にこの車をくれたのか、理由はよくわからねぇがこれで俺は自由にいろいろなところへ行かせてもらうぜ。
そして・・
そして、いつか・・
いつか、おやじとお袋の仇(かたき)をとるのさ。
おっと、運転に夢中になって忘れていたぜ。
街に入ったら花屋を探してちょっとした花束を見繕ってもらわなくちゃ。
突然見舞いに行って驚かしてやるのさ。
そういやあの娘(こ)、ずっと入院しているのに今度「南部博士の娘になる」って言っていたっけ。
ふっ、物好きなお嬢さんだ。
まぁいいさ。
お互い「お国言葉」で話せば気も紛れるってもんだからな。
(Fin)
「深夜の車内」で登場人物が「夢中になる」、「花束」という単語を使ったお話を考えて下さい
・・という「恋愛お題ったー」のお題に沿って書いてみました
拙作「ジョージ浅倉の息子」の番外編です。
