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私のアイドル

 一日のパトロールを終えた忍者隊の諸君が三日月基地に帰還した。
健が報告を済ませると諸君はそれぞれ待機ルームへと戻っていった。
だがジュンはそのまま博士のデスクの前に残っている。
「どうしたね?ジュン」
南部博士は椅子に座ったままうつむき加減で立っているジュンに声をかけた。
「あの・・明日のパトロールなんですけど・・」
なんでもはっきりとものを言うジュンにしては珍しくもじもじとしている。
まさか靴を片方失くしたとかいうのではないだろうな・・そう思いながらも
「言ってごらん」
博士は優しく声をかけた。
「あのぅ・・パトロールが無事に済んだらここに戻らないでそのまま行きたいところがあるんですが・・」
「ゴッドフェニックスで行きたいというのかね?」思わず博士の右眉が上がる。公私混同されては困るのだ。
「いえ、ゴッドフェニックスはちょっと離れたところに置いて行くところはYK894地点です」
やはり公私混同ではないかと思いつつも博士はジュンの言った地点の地図を手早くインプットするとスクリーンに出した。
「と、いうと・・ペイズリー農場かね?」
「はい」
曇っていたジュンの顔が上気してビリジアンの瞳が輝きだした。
「実はそこでデーモン5の野外フェスがあるんです」
「農場で!?」

 そういえば1969年にもアメリカのニューヨーク州にあった個人所有の酪農農場で大規模な野外フェスがあった。
あれは、ウッドストック・フェスティバル(Woodstock Music and Art Festival)といってのちに伝説のミュージシャンとなったジミヘンやジャニス・ジョプリンも出演していた。
愛と平和、そして自由を謳ったヒッピーたちの祭典でもあった。

 博士がそんな物思いにふけっていると、ジュンが嬉しそうに話を続けた。
「会場内は入場料がいるんですけど柵の外なら無料で聞き放題なんです!」

そうか、そういえばウッドストックの時も確か途中からなし崩し的にフリーコンサートになってしまった。若者はいつの時代にも自由に憧れるものなのだ。
博士ははっと気づいた。
「無料ということはそのナントカ5のライブへは五人とも行くのだな」
「まだみんなには都合を訊いていないんです。行かないって言われたら私一人で降ろしてもらうつもりなんです。あとの四人はデーモン5の音楽には興味がないみたいなので・・ダメでしょうか・・?」

ジュンの表情が再び曇った。
眉の両端が下がって上目づかいに博士を見ている。
その博士はコの字に曲げた右手の人差し指を顎に当てて目をつぶり何事かを考えている。
「ジュン、四人をちゃんと説得して必ず五人そろって行けるかね。それなら許可しよう」
意外な博士の言葉にジュンは一瞬ためらいを見せたがすぐに「はい、大丈夫です!」ときっぱり答えた。
そしてその笑顔には説得できるという自信が満ちていた。

その笑顔を見た博士はどんな方法で説得するのかは訊かないほうが良いだろうと判断し・・いや、恐ろしくて訊けないので「よろしい」とだけ応じた。
「わぁ、よかった!博士、ありがとうございます」
ジュンは組んだ手指を上気させた頬に擦るように当てた。嬉しい時の彼女のサインだ。
夢だと言っていた自分の店を持たせてやろうと言った時と同じだ。
「さっそくみんなに話して来ます!」
そう言うが早いか白鳥が水辺から飛び立つ時のように優雅に美しく、しかし大変な猛スピードで待機ルームへ消えていった。

 これで健のツケは少し減るだろう。甚平はスナック・ジュンでの仕事が少し楽になるだろう。
そして竜のカレーライスの盛りがよくなると思われる。
だが、ジョーは・・?

ま、ジョーは一応女の子のジュンのお願いを断りはしないだろう。

「ギャラクターと戦っている方がよっぽどましだぜ」
そういう男子諸君のボヤキが聞こえるような気がする博士だった。


(おわり)

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