【注意】話の途中、少しだけ性的表現があります。苦手な方は読まずにご退場ください【注意】
時折ジョーを襲った強烈なめまいと頭痛は最近その間隔を狭めていた。
だが、ジョーはこのことを誰にも知られたくなかった。憎むべきギャラクターをこの手で滅亡させるまで戦い抜くのだ。迫りくる死の恐怖を払いのけるかのようにジョーは飛ばした。
ジョーはサーキットで軽快なエンジン音にしばらくは身をゆだねていたが、その耳にかすかに不快な雑音が紛れてきた。
ヘリの音だ。
それも一台や二台ではない。
それはあっという間にジョーのレーシングカーに追いついてきた。
ギャラクターの戦闘ヘリだった。
なぜ俺の居所がわかったのだろう?
「G-2号機でないのが残念だ。それに俺の身体ときたら・・」
ジョーはハンドルを握り返したがとても逃れられる相手ではない。
急ハンドルを切ってはみたもののついにガードレールをぶち破るとジョーは車外へ放り出されて気絶してしまった。
「なんでぇ、意外にもろかったじゃねぇか」
ついにジョーはギャラクターに捕えられ、非戦闘バージョンのメカドクガへと連れ去られてしまった。
ジョーは奇妙なマスクをかぶった男の前に引き出された。
「サーキットでせっかくお遊びのところ、すまんかったのう。許してちょうよ」
だが男がそのベールを脱ぐとそこから金色の長い髪を耳元で束ねた女隊長が現れた。
「ちぇ、紫の君のお出ましかと思ったら女のカッツェ・・いや、女隊長さんか」
少し丸まった鼻の先を親指で掻き上げるジョーに女隊長は蛇のような冷たい視線を注いだ。
「お前がコンドルのジョーだっていうことはわかっているからねぇ。フフフ・・コンドルのジョー。お前とちょっとしたゲームをしようと思ってね。さぁ、こっちへ連れてくるんだよ」
女隊長は雑魚兵に命令した。
マシンガンを突き付けるチーフをジョーは睨みかえした。
「雑魚は引っ込んでな。俺は女性からの御誘いを断るような野暮天じゃねぇよ」
ジョーは自ら進んで女隊長の後に続いた。
大きなギャラクターのマークがスライドするとその奥に白い部屋が現れた。
ジョーがその部屋に入ると入り口は再びぴったりと閉じられた。
そして女隊長が口を開いた。
「コンドルのジョー、お前はやはりあのジュゼッペ浅倉の息子だったんだね」
「なに!?」
ジョーの動きが止まった。
「ジュゼッペも女性には優しくてね。乱暴はできなかったよ。どうやらお前もそのようだね」
立ち止まって腕組みをしているジョーの周囲を値踏みするようにぐるりと歩きながら女隊長は薄ら笑みを浮かべていた。
「さぁ、もっとよく顔を見せてごらん」
顔を寄せて来る女隊長の目とジョーの目があった瞬間、みぞおちにちくりと痛みが走った。
思わず顔をゆがめるジョー。
「フフフ、これは特別な筋弛緩剤だよ。意識ははっきりしているのに身体には力が入らないのさ。これでもう私はおまえのことを自由にできるというわけさ」
「くそう・・」
ジョーはたまらず膝をついた。
女隊長が壁の配電制御盤に並べられているスイッチを押すと天井から鎖が付いた手錠が下りてきた。
そしてそれは容赦なくジョーの両手首を捉えてジョーは宙吊りになった。
それと同時に床からは足かせが出現してジョーの両足首をつかんだ。
「な・に・を・しよう・と・いう・・んだ・・」
動かせない身体をなおも動かそうとするジョーだったが、もはや自由になるのは瞼と口唇くらいだ。
「今日、私がカッツェに代わってお前に会ってやるのにはわけがあるのさ」
そう言うと女隊長はジョーの顎からうなじにかけて右手を伸ばしてきた。
冷たい指先のせいか、ジョーの身体が凍り付いたようになり鳥肌が立った。
女隊長は構わずにジョーの耳たぶをその指先で弄んだ。
「ジュゼッペは私の申し出を冷たく断った。私が目をかけてやったから幹部になれたというのに」
「な、何のことだ!?」
「お前の弟を私が産んでやろうということだよ。それを・・!」
ジョーの頭の中はひどく混乱していた。
(俺の弟・・?この女隊長が俺の弟を産むだと!?)
「何も知らないようだね。無理もない。お前はまだほんの子供だったからね」
「オヤジと何かあったのか?」
「何もないさ。けど、この前変身を解かれたお前の姿を見て思い出したのさ。ジュゼッペにそっくりだったからねぇ」
女隊長の指が耳からゆっくりとジョーのうなじを再びすべっていく。
赤く塗られた長い爪の先がほんの少しだけ触れるか触れないかという感覚が、かえってジョーの身体を熱くしていた。
「や・・めろ・・」
「感じやすいんだね。いいねぇ、若い子は・・」
女隊長はジョーの身体から離れると配電制御盤の下に置かれたテーブルの上のボトルに入った紅い液体をグラスに注ぎ一気に飲み乾した。
そして再びジョーに近づくとわざわざ踏み台を一段登って首の後ろへと手を伸ばしてきた。
後ろ髪を掴まれてジョーの顎が上がる。
その口唇に女隊長の口唇が近づく
「この瞳も眉も、鼻筋も、顎も・・そっくりだ。ジュゼッペ・・いま気持ちよくしてあげる・・」
女隊長は薄紫色のぴっちりとした戦闘服を自らビリビリと破りながら脱ぎ捨てた
豊満な胸があらわになった。
女隊長はジョーがジュゼッペに見えてきたらしい。
「う、くそう・・」
女隊長の吐息が鼻にかかる。
甘いワインの香りがした。
それは彼女を恍惚とさせる秘薬だったのだ。
「私はおまえが欲しかった。だがお前はカテリーナを愛しているといって私を拒否した。邪魔者を消すのが私の流儀。こうなったらカテリーナをデブルスターに襲わせてジュゼッペを私のものにしてやる」
女隊長の赤い爪がジョーのジーンズに触れると腿の内側をカリカリと掻いた。
それがジョー自身を微妙に刺激した。
「ギャラクターを抜けたがっていたデブルスターに友人でもあったカテリーナを
殺るように命じたのさ。成功すれば自由の身だといってね」
女隊長はジョーのベルトのバックルを緩めた。
「だがお前はカテリーナが撃たれるのを見て護身用の拳銃を自分に突き付けてしまった!裏切り者としてカテリーナを処刑してお前は私と一緒になるのではなかったのか!?」
「おめぇみたいなやつと一緒になってたまるかよ」
ジョーは女隊長の顔に向かってつばを吐いた。
「くそう、ジュゼッペ。おぼえてるがいい。息子は殺さずにおこうと思っていたが・・。まぁいいさ、これで”カッツェ”が一家の皆殺しを市長に命令するだろう。既に『こと』はほとんど終わっているがね」
ジョーは両親が殺された本当の理由を知った。
男の本能で身体が熱くなっているが、ジョーの頭の片隅に冷めたところがあった。
左足にかかっている足かせが甘いのだ。
靴に半分かかっている。靴を脱げば足が抜けるだろう。
押し寄せる快感を懸命に振り払いながら、ジョーは機会をうかがっていた。筋弛緩剤の影響はもうほとんど消えている。
チャンスは一度だけだ。ジョーは冷静に「その時」が来るのを待っていた。
(もう少しだ)
しかし再び女隊長はジョーの筋肉質の背中に腕を回すとぴったりと身体を寄せ、のど仏の下をねっちりとした口唇で強く吸った。
拒否する感情が強くなればなるほど甘美な快感が頭のてっぺんに押し寄せる。
皮膚感覚も敏感になっているのか?女隊長の露わになっている乳房の先が固くなっているのがTシャツ越しでもわかる。
「っふ・・くっ・・くそ・・う・・うっ!」
背中にちくりと痛みが走った。
「ふふふ・・コンドルのジョー、お遊びはここまでだよ。今、お前の身体に特別製の自白剤をたっぷりと入れてやったからねぇ。じきに科学忍者隊の秘密を全部私に話すことになるさ。クロスカラコルムに着いたらゆっくり聞いてあげるからね」
ニヤリと冷たい微笑みを浮かべた女隊長はカラになった注射器をジョーの目の前にかざして見せた
(今だ!)
ジョーは思い切り女隊長の腹を蹴った。
「カッツェ、死ねぇー!!」
「ぐぅえぇえぇっぇぇえっ・・!」
気味の悪い叫び声を発し、その口から泡を吐きながら女隊長は壁に向かって真っすぐ吹き飛んでいった。
そしてジョーの目論見どおりに配電制御盤に思い切りぶち当たったのだ。
バシッ!と閃光が走り大きく乾いた音がすると女隊長は配電制御盤もろとも花火に包まれてショートした。
「ぎゃぁああぁあぁああ!」
女隊長の悲鳴が合図のようになってジョーを縛り付けていた手かせ足かせが外れた。
女隊長は配電制御盤に貼り付いたままでシュウシュウと音を立てている。
「カッツェさま、どうしました!?」
チーフらが部屋へと入ってきた。
壊れた配電制御盤はジョーを自由の身にしたが、同時にこの部屋の鍵も外したのだ。
ジョーには女隊長の生死を確かめる余裕はなかった。
脱げた靴を履き直しズボンのベルトを締めなおすと一目散に出口と思われるハッチに向かって走り出した。
「コンドルのジョーが逃げたぞ~!」
運よくハッチのロックも解除されていた。
ジョーはその重い扉を開けると外へ飛び出した
「うわぁーーー!!」
「ああっ、飛び降りやがった。」
「あいつ、ここが空の上だって知らなかったんじゃないですかね。チーフ」
「どうかな。確実なのは俺の隊長昇格がパーになったのとあいつがあと数秒で死ぬことだ」
「バード・ゴー!」
ジョーは3,600フルメガヘルツの虹光に包まれ、コンドルの翼を広げ地上へ降り立った。
だが、まためまいに襲われてしまった。
そして女隊長に打たれたあの強力な自白剤が効き始めていた--------
(おわり)

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