「よう、ジンペイ。コーヒーだ。それからサンドイッチ。ベーコンとトマトをたっぷり挟んでくれ」
「景気いいね、ジョー」
久々にスナックJに顔を出したジョーは機嫌が良かった。こういう時は懐が暖かい時だ。注文したコーヒーの銘柄も、いつもよりワンランクアップしている。
「誰かを2、3発ぶん殴ったのかい?それともナイフをチラつかせてー」
「お前なァ」
眉を寄せ向けてくる灰色がかった青い瞳が、しかし本気で怒っているわけではないのは、わかる。
「週末に参戦したレースで優勝したんだ。それで少しだが賞金が入ってよ」
「なるほどね。ついでにケンのアニキのツケを払ってくれると嬉しいな」
「なんでおれが奴のツケを払わなきゃいけないんだ」機嫌はいいが、そこまで浮かれてはいない。
だが、ジョーはジンペイの特製BLTをたいらげコーヒーをおかわりして一息つくと生ごみを片しに裏口から戻ってきたジンペイを手招きして呼んだ。
「なんだよ、ジョー。他にお客はいないんだぜ。」
そう云いながらもジンペイは先ほどよりもジョーの瞳に本気があるのを感じとっていた。
そういえば、マリンサタン号でケンと帰って来たころから、ジョーは時々ふと何かを考え込んでいることが多くなった。
「ジンペイ、オレ今から旅に出る。なに、心配するこたぁねぇよ。すぐに帰ってくるからな。」
「え~っ?!どこへ行くのさ。博士や健たちは知ってるのかい?もしもの時、G-2号機が…?」
ジョーの眼がキッと鋭くなった。
「博士や健には『特に』内緒だ。それにG-2号機はちゃんと格納してきた。いいなジンペイ。」
「あ、あぁ…。」
ジョーはカップに残っていたコーヒーを飲み干すと
「墓参りさ。おやじとお袋の…。」
そうぽつりと言い残すと、席を立った。
「ジョーの兄貴ィ…。」
「いいか、ジンペイ。男と男の約束だ。誰にも言うんじゃねぇぞ!」
「わかったよ、ジョー…。」
いつもながらジョーの気迫に押されたジンペイはしぶしぶ右手で拳を作った。
「へへっ。」
スナックJの出入り口でジョーとジンペイは拳と拳を合わせて約束をした。
その時、その扉を押してジュンが帰って来た。
「アラ、ジョー。久しぶりね。なにしてたの?」
そうジュンに聞かれて口ごもるジンペイ。
するとジョーは
「いや、なぁに。小さな鏡があったら貸してもらおうと思ってね。」
と、突飛なことを言い出した。
「鏡?あるわよ。」
そう言ってカウンターの引き出しから手鏡を出したジュン。
「何に使うの?」
「あぁ。ちょっと髭を…。」
「髭?!」
「ん、いや…剃り残しがあると、彼女に嫌われるんでね。ははっ。ジュン、サンキュ!またな。」
額にちょっと手をやり軽い敬礼をするとジョーは去っていった。
「ヘンなジョー。ジンペイ、何か聞いてる?」
「いや~、なにも…」
ジンペイの受難の日々はしばらく続きそうだ。
(おわり)
同じ始まりでもそれぞれ違うお話が展開します。
お楽しみください
A Dog's Story byさゆり様
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Have a nice day by朝倉 淳様
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ある日常 by廖化様
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手のひらのUNIVERS by yu-jin様
http://gatchaman.que.jp/cgi-bin/magazine8/c_board.cgi?v=94

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