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があわいこの文字置場

切手とコイン


 クリスマスツリーの飾りつけも終わり、スナックジュンの店内はパーティーの準備が万端整っていた。
あとはスタンド看板の電気をつけてお客さんが入ってくるのを待つだけとなっている。
ところがカウンターで調理をしているはずの甚平の姿がなかった。
「ジンペイ!あら・・どこ行っちゃったのかしら」
カウンターの中を覗き込んだ後、ジュンは2階に上がっていった。すると自室のベッドの上にしょんぼりと腰掛けている甚平をみつけた。
テーブルの上には何かのノートのようなものが2冊並べてある。
「どうしたの」
「ジョーの兄貴からクリスマスプレゼントが届いた」
肩を落としたままの格好で甚平はため息まじりにそうつぶやいた。
「えぇ?!」
ジュンは耳を疑った。
というのもクロスカラコルムから戻ってずいぶん経っていたからだ。
「まさか、ジョーは生きていたの!?」
ジュンの声がうわずっている

「うぅん、おねぇちゃん。これクリスマスに届くようにしばらく局留めになっていたらしいんだ」
「まぁ」
ジュンは机に近づくとかなりしっかりとした作りの”ノート”の表紙に触れた。
「それにしても同じようなノートが2冊とはねー」
すると甚平は片方の”ノート”に手を置いた。
「違うよ。こっちはオイラがジョーにあげようと思って買ったコインアルバムだよ。集めていた切手を売ってさ。そしたらこのジョーの手紙にはもうコイン集めはやめたからそれを全部売り払って切手帳を買ったから使えって書いてあるんだ。オイラもう切手は一枚だって持っていないって言うのにさ」

「ジョーがコインの収集をしていたなんてちっとも知らなかったわ」
二人がお互いを思いやる気持ちがとんだ行き違いになってしまったことをジュンは理解した。

甚平は右手の中指で鼻先を軽くたたきながら答えた。
「おいらが一度トレーラーに遊びに行った時さ。瓶の中にコインが沢山入っていたんだ。で、そのうち『甚平の切手みてぇにきちんと整理する』って言ったんだ。その時、『オイラの切手帳はボロっちくてとても他人ひとに見せられるものじゃないよ』といったのをジョーの兄貴は覚えていてくれたんだと思うよ」
甚平は涙声になっていた。

「あのころ、竜巻ファイターを2度も失敗したりして元気がなかったろ?だからクリスマスに内緒でプレゼントしようと思っていたんだ」

ジュンもアルバムの表紙を優しく撫でていた。
「これ、どうするの?」
「もちろん大切に取っておくさ。大人になってう~~んと稼いだらこの二冊とも切手とコインで満タンにするんだ」
鼻をすすったものの元気な声でそう言った甚平は2冊のアルバムを大切そうに机の引き出しに入れた。
そこにはあの日健が受け取らなかったブーメランも仕舞ってある。

「そうね、ジョーの分も頑張って集めなくちゃね」

その時だった。
「ジューーン、甚平お坊ちゃまーーー!腹が減ったぞい。早く店を開けてくれんかいのー。他のお客さんも店の外で待ちくたびれているぞい。クリスマスの掻き入れ時だというのにまったく姉弟きょうだい揃ってのんびりしちょるのー」
階下から竜の呑気な声が聞こえた。

ジュンと甚平は顔を見合わせるとクスッと笑い階段を下りていった。

(終わり)
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