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2009年2月7日ILoveGeorgeAsakura に初掲載。

ストレートな健とジュンてどういうわけかあまり見かけないので(苦笑)書いてみた。
健の心(ブーメラン)の扱いは他のパターンも書いた。
この場合は甚平の成長を表す小道具として表現してみました。

2011-02-05 14:42

一日遅れのバレンタインデー

「ちぇ。何だってあんなに楽しそうなんだ?ジュンのやつ。」
臨時休業の貼り紙がしてあるスナックジュンの店内には先ほどからチョコレートのいい香りが立ち込めていた。
カウンターの中ではジュンが甚平にアドバイスされながらチョコレートを湯煎にかけているのだ。

「おねえちゃん、もう少し手早くかき混ぜないと熱くなりすぎるぜ。」
「うるさいわね、甚平。早くしたら回りに飛び散ってしまうじゃない?!」
「不器用だな、へったくそ!」
「なんですって!?」
「あー、もういいから。こんどは型に流し込もうぜ。」
「んっ、もう~っ。」
いつもながらの姉弟ゲンカをカウンターに座って見ている健だったがちょっと不機嫌なのにはわけがあった。

「墓参りにチョコレートなんて聞いた覚えが無いぜ。」

ジョーが去ってから甚平はあのブーメランをお守り代わりにずっと持っていた。
だが、久々に南部博士がBC島での学会に出席し、その後ジョーの両親のお墓参りをすることを知るとこのブーメランを一緒に埋葬できないかと聞いてきたのだった。
それでいいのかと尋ねる博士に甚平はこう答えた。
「オレ、もう子供じゃないよ。」

「なら、どうだ甚平。一緒にBC島へ行かないかね?」
「あ~、でもスナックジュンは・・?」
「ジュンも一緒に、店は臨時休業にすればいい。」
「わ~い、博士。さっそくおねえちゃんに言ってみるよ。」

こうして話はトントン拍子に進んだ。
学会の終わる日が2月13日ということだったのでチョコを持っていき、14日のバレンタインデーにお墓参りをしようということになったのだった。

「ケン、ケンってば。」
考え事をしていた健はジュンが話しかけているのにやっと気がついた。
「ああ・・。」
「『ああ』じゃないでしょ?ケン。ケンは行かないの?BC島。」

(おまえがジョーの墓にチョコをお供えしてるとこなんか見たくないぜ。)
そう、健は心の中でつぶやいた。だが、
「あぁ、オレちょっと用事を思い出した。またな。」
そう言って健はスナックジュンを後にした。

「変なケン・・・。」
その後姿を見送ると、指にくっついたチョコを味見しながらジュンはつぶやいた。


とうとう健はBC島へ行かなかった。
臨時のエアメールを届ける用事ができたとみえみえのウソをついて見送りにも来なかったのだ。
父親と遠洋漁業に出かけている竜からさえみんなによろしくとの電報が届いたというのに。


15日の夜になってようやく健は自分の飛行場へ帰ってきた。
愛機のそばに誰かが立っているような気がして、目を凝らして見たが誰もいなかった。
「オヤジ?・・今、お参りしてきたところじゃないか・・。」

そう独り言をいいながら、いつものようにドアが開けっ放しになっている部屋へ入っていった。
すると薄明かりの中、テーブルの上に何かが置いてあるのがわかった。
急いで明かりをつけてみると、それはピンク色のリボンがかかった小さな箱だった。
添えてある手紙を開くとこう書いてあった。

『ケン、おかえりなさい。
BC島は暖かくて本当にいいところだったわ。
あの教会もアラン神父の教え子たちがりっぱに建て直して美しく生まれ変わっていました。
あの忌まわしい出来事がウソのようです。

この包みはジョーのお墓参りの時にケンに渡そうと思っていたけれど、できなくて残念でした。
2つともジョーにあげてこようかと思ったけど、甚平が「ど~せアニキのとこはカギなんかかけちゃいないだろうから置いてきちゃいなよ。」
というのでそうすることにしました。
ジュンより』

健がフフンと鼻先で笑い、その包みを開けようとしたときだった。
どこからともなく飛んできたアメリカンクラッカーが健の手首に絡みついた。
そして次の瞬間今度はヨーヨーがその包みを健の手から奪っていった。

「へへんだ。アニキ、油断したね。」
開いたままだったドアのところにいつ来たのか甚平とジュンがニッコリ笑って立っていた。
「おねえちゃん、なにやってんだよ。もう一回ちゃ~んと渡すんだろ。」
「え?も、もういいわよ。一日過ぎちゃったし・・。」
甚平が今度は健に向かって言った。
「アニキもアニキだぜ。なんでこういう大事な時にヘソを曲げるかねぇ?」
「オ、オレは・・。」
(オレの分のチョコもあるなら何でそう言ってくれなかった?)
そう言おうとしたが健は言葉を飲み込んだ。

甚平はズボンの脇のジッパーをあけるとクラッカーを丁寧にしまいながら言った。
「オ、オレはさ、帰るよ。しばらく店を休んじまったろ。明日の仕込みをしなくちゃ。」
そしてさらに続けた。
「じゃ、アニキ。おねえちゃんをよろしくな。おねえちゃん、かえって邪魔になるから店には帰ってこなくていいぜ。」
「まっ、生意気言って。甚平ったら・・。」
ジュンはそう言って去っていく甚平の後姿を見送ったが、追いかけていくことはせずに健のほうへ向きなおると包みをヨーヨーの吸盤からはずした。
そして、それをまっすぐに健に差し出したのだ。

しばらくして、健の部屋の明かりは消えた。

その様子を物かげから見ていた甚平はジョーの遺言を思い出していた。
『・・・ジュン、健と仲良くな。』

「まったく人騒がせだよ。あの二人は。」そうつぶやくと甚平はスナックジュンへと帰っていったのだった。

(終わり)

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