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No title

こちらへのアップがFと逆になってしまいました(汗)
今からちょうど2年前のLoveGeorgeAsakuraが初出です

No title

があわいこさん、こんにちは。
この作品とFは、響子さんのブログの方で先に拝読してしまいました。
順序が逆ですね。

今回読み直してみて、『ガッチャマン』の世界、そしてコンドルのジョーの全てを知り尽くしているわいこさんだからこそ書ける物語だとつくづく感じました。
私など足元にも及びません。
ははぁ~m(_ _)mって感じですよ、もう!

オリジナルの世界の中に、ESP能力を持って来られる辺り、他にはない見所が沢山でした♪
そしてキョーコさんの設定にもわいこさんのオリジナリティーを物凄く感じました。

良い物を読ませて戴きました。
有難うございました。

ところで完全版ってあるんですね?ふふっ。

No title

minakoさん

続けて読んでくださってありがとうございます

本当は本篇準拠で終わったお話だったのですが、デアゴ社のDVDで2とFも見た記念に蛇足を書きました(爆)←お金かけたからね~(苦笑)

>ESP能力を持って来られる辺り
あのジョーに対抗(?!)するには何か特殊能力がないと太刀打ちできませんから~

2とFは心に残るものがあまりないのでキョーコもほとんどん寝ていたし(爆)あの羽根手裏剣が地球を救ったことだけをジョーに伝えたいと思って書きました

本篇は謎やツッコミどころが多くて創作意欲を掻き立てられますね
minakoさんのお話も(老後の?)楽しみに少しずつ読ませていただいています。
どうぞminakoさんワールドを思いっきり展開してくださいね

>完全版
ムフフ
一度書いたのですが完全にポルノだったのでそこだけこっそりしまってあります。
機が熟したらお披露目もあるかな?

ジョージ浅倉の息子II

「ジョー、危ないわ。こっちへ戻りなさい。」
二歳くらいの小さな子供が、道に飛び出してきた。
母親なのか?まだ若そうな女性が、その後を追ってくる。


「やぁ、キョーコ。元気そうだな。」
「あらケン。パパのおつかい、ごくろうさま。」
キョーコは、小さなわが子を抱き上げると『国際科学技術庁・職員寮』とかかれたエントランスをくぐって、ケンを自室へ案内した。

「博士から預かって来たよ。」と言ってチェック柄の手提げ紙袋からケンが出したのは子ども用の小さなハンチングハットだった。
「これだわ。よく取ってあったわね。ありがとうと博士に伝えてね。」
古ぼけたブルーの帽子を抱きしめるキョーコをケンは不思議そうに見つめていた。
「それ、誰の帽子?ジョー…ジョー・ジュニアにはまだちょっと大きいみたいだし。」

「これ?これはジョーが被っていたの。BC島から脱出するときにね。」
「へえ。」

 ふいにキョーコのエメラルド色の瞳から大粒の涙があふれた。
「クロスカラコルムへ行かせるんじゃなかった…。」
「キョーちゃん?…」
「ダメねぇ。もう後悔はしないって決めていたんだけど。」
帽子を再び紙袋にしまい、涙をぬぐうとキョーコはポットカバーを外して紅茶をカップに注いだ。

「あの日、空港でジョーに会ったの。今までに見たこともないようなものすごく強くて美しいオーラに包まれていてそれはそれはカッコ良かったわ。ギャラクターへの復讐心ではなくて自分がなぜこの世に生れて来たのかを悟った輝きに満ちていたの。あの姿を見たら、ジョーの想いに反対することなんてできなかったわ。」
そう言うとキョーコはケンにシュークリームを勧めて紅茶を一口飲んだ。
「オレの好物、覚えていてくれたんだね。」
「えぇ。もちろんよ、ケン。」
キョーコに笑顔が戻った。

その時、それまで大人しく絵本を見ていたジョー・ジュニアが突然、
「ママ、ママ。パパ、パパ。」と言いながら紙袋を開けようとした。
キョーコは母親の顔になると、
「ジョ~くぅーん、それは私のパパの南部博士からのおみやでちゅよ。ジュニアのパパは…」
そう言いかけてはっとした。
(ジュニア。あなた、まさか…?)

「どうかしたか?」
「ううん。」
キョーコは隣りのチャイルドチェアーにジュニアを座らせると「ア~ン」といって自分のシュークリームを頬張らせた。
「キョーちゃん、南部博士なんだけど…」
「なあに?」
「せっかく平和になったのに、まだオレたち忍者隊を解散させるつもりはないらしいんだぜ。それどころか大がかりな海底移動基地を建設してるし。」
「それは…。それは万が一に備えているのよ。」
「だけどもうあれから3年がたつぜ。」
ケンはクロスカラコルムの冷たい草の上で別れた男のことを思い出していた。
「早いものね。この子が生まれてもう2年が過ぎたわ。…博士は、総裁Xが再び地球を狙って戻ってくるかもしれないって考えているようよ。」

「総裁Xか…」
ケンがそうつぶやいた時、彼のブレスレットが鳴った。
「はい。ケンです。」
南部博士からだった。
「豪華客船がナゾの沈没事故を起こしたらしい。すぐに調査開始だ。」
「わかりました。博士。」
ケンはブレスレットのスイッチを切るとキョーコに澄んだ青い瞳を向けた。
「まさか、総裁Xじゃないよな。」
「さすがはガッチャマン、するどいわね。」
だがその言葉をキョーコは呑み込んだ。
確信がなかったし、そんなことになった欲しくは無かったからだ。

ケンは風のようにキョーコのもとを去って行った。

 確信と言えばキョーコにはまだジョーが死んだことが信じられなかった。
傷ついたジョーを背の高い男性が抱いてどこかへ運ぶ姿が頭から離れない。
でもそれは、あのBC島での出来事のはずだ。
「ジョーと別れてから、いいえ、この子を産んでから私のチカラは弱くなったものだわ。」

キョーコは相変わらず脳科学研究所に勤めていたが、ジュニアを身籠ってからというもの危険なSVR波の照射実験はしていなかった。
出産後、彼女は自分の能力(ちから)が衰えているのに気付いたが、敢えてそのまま自然に任せることにした。
---見えないものは見えない方がよい---
普通の暮らしが一番良いと知っていたからだ。


 それから何ヶ月か過ぎたある日の夜、いつものようにジョーの古いハンチング帽を枕元に置いて眠りに就いたキョーコは不思議な夢を見た。

ギラギラと照りつける太陽と砂漠…。
そこにあの男は立っていた。
「ジョー、ジョーなの?」

 その姿は太陽の反射で良く見えなかった。
はっと目が覚めるとそこにジョー・ジュニアが立っていた。
「ジョー…。そうね、あなたを呼んでしまったわね。」
キョーコはジュニアを抱き上げるとやわらかいほほにチュッとキスをした。
横目でキョーコを見つめるジュニアの瞳はジョーそのものだった。
「ジョー…!」
キョーコは思わずジュニアを強く抱きしめた。

だが、フッとジュニアの姿が消えてしまったのだ。
キョーコはハッとした。
こ、これも夢…!!

「ジョー!」
今度は本当に目が覚めた。
玄関のドアが開いていた。
眠っていたはずのジュニアは自分の小さなベッドの上にはいなかった。
「ジョーーーーーッ!」




総裁Xの人間改造機によってカプセルの中で急成長したサミー、いやゲルサドラは総裁Xの前にかしこまっていた。

「総裁さま。お呼びでしょうか?」
「ゲルサドラよ、よく聞け。先のカッツェの時に、超能力者の女を一人殺りそこねたのは知っているな。」
「はい。総裁さま。愚か者のカッツェは小さな女一人を見つけだすこともできずに…。」
「その女はギャラクターにとって邪魔な存在だ。世界中から科学者や軍事武官を拉致し始めればいずれしゃしゃり出てくるであろうガッチャマンや南部がうるさくなる前に始末してしまうのだ。ゲルサドラ、オマエなら見つけられるな。」
「はい。その女のESP脳波パターンはとっくに分析済みでございます。もう時間の問題かと。」

だがギャラクターのESP脳波パターン解読装置にかかったのは小さな男の子だった。

理由はわからないが、とにかくその子を拉致して調べてみれば何かわかるに違いないとさっそく偽のテレパシーを送り、罠にかけたのだった。

 ゲルサドラは再び総裁Xに報告した。
「総裁Xさま。拉致して来た男の子のDNAを調べましたところ、興味深い結果が出ました。あの子の母親は99.9%の確率でキャロラインでございます。」
「ほほう。」
「そして…。」
「そして、どうした?」
「はい。その父親は。」
「父親は?」
「95パーセントの確率で科学忍者隊のコンドルのジョーだという結果が出ました。クロスカラコルムで薬を注射した時に取っておいたデータが残っていましたので先ほど照合させました。」
「たわけたことを申すでない。コンドルのジョーは死んだはずだ。」
「はい、しかし死ぬ前に忘れ形見を残した可能性はあります。」
「ええい。ならば確かめる方法が一つある。コンドルのジョーが使っていた羽根手裏剣と同じものを作るのだ。」
「羽根手裏剣?!とな。」
「ふふふっ。上手くいけば、キャロラインだけでなく忍者隊や南部もこの世から抹殺できるぞ。」
「なんと、なんと南部や忍者隊までも…?」
「そうだ。その子を始末したら、首にその羽根手裏剣をグサリと…。」
「ひえ~~っ。」
「驚いている暇があったらさっさと片付けてしまうのだ。ゲルサドラよ、やれるな?」
「ははっ。」

 ゲルサドラは総裁Xが示したデータをもとに羽根手裏剣を作るとそれを手に取り、かざして見た。
「はっ?なんとなんと、キャロラインの行方を捜していて科学忍者隊だったコンドルのジョーの息子が見つかるとは。キキカイカイ、リンネテンショウ、チミモウリョウ、…フォ~、ホッ、ホッ、ホッ。」

ゲルサドラは独りほくそ笑んだ。
「おろか、おろか。これで間違いなくこの子を殺したのはコンドルのジョーだと思うに違いない。フ、ファ、ハハハ!超能力か何か知らないが、このゲルサドラにかなうものなどいないのだ!」
そして命令を下した。
「この子を使ってキャロラインをおびき寄せるのだ。死んだはずのコンドルのジョーとやらにもご出演願ってな。ふぉ~、ほっ、ほっ、ほっ。面白くなってきたぞ。」


 キョーコ---本名キャロライン・コスターの両親は北の国スケッタランダの出身でBC島でパン屋をしていた。
天然酵母菌を使った独特の製法と味がジェラードにも合うと評判を呼び島中から注文を受けて繁盛していた。
しかしこの二人にはある特殊な能力があった。
それはスケッタランダ地方の一族に特有のもので昔から「神の声を聞くもの」と言われてきた。
コスター一家も代々「死者と話をする」というシャーマンだった。
長い歴史の中で世界中に散らばり、他の民族と同化することによってその能力も次第に失われていったが、時々先祖に還ったように強力な能力をもって生れてくる者もいる。
キョーコもその一人だった。
そこでキョーコの両親、ベンジャミン・コスターとセーラ・コスターは娘になるべく普通の生活をさせようと閉鎖的な北国から明るく開放的なこのBC島へ移民して来たのだった。
もちろんマフィアに関しての情報も知らないわけではなかった。だが、BC島はそれよりももっと恐ろしい悪魔が棲む島になっていった。
表向きは以前からこの島にいるマフィアと変わらないが何かもっと恐ろしいことを企てているように「感じた」コスター夫妻はパンの配達をしながらこっそりとその内情を「読みとろう」としていた。

ところがたまたまギャラクターが実験をしたいたESP脳波パターン解読装置が反応したのだ。

『近くにエスパーがいる。注意しないとギャラクターの秘密が漏れてしまうぞ。脳波をたどって見つけ次第抹殺しろ。』
カッツェの命令にギャラクターはコスター夫妻を割り出した。

「私たちはダメかもしれない。が、せめて、子供だけでも助ける方法はないものか?」
その夜、そう考えている二組の夫婦がBC島にいた。

コスター夫妻とアサクラ夫妻である。

 ジュゼッペ・アサクラは親がイタリア人ということは分かっているが、ほんの赤ん坊だったときに教会の前に捨てられていた孤児だった。
本名もわからぬまま孤児院で育つうちにBC島の女性と結婚した日本人の浅倉譲二と知り合い、やがて養子となった。
その後、ジュゼッペは浅倉夫妻とともに日本へ「帰る」と科学者を目指して勉強を始めたが、譲二と養母ロザンナが相次いで亡くなってしまい、失意のどん底で故郷BC島へ戻った。
そこで島の新興勢力ながら科学者を優遇してくれる組織があると聞いて島で再会した幼なじみで同じく孤児院育ちのカテリーナとともにその一員に加わることにした。やがて二人のあいだには一人息子が生まれた。

それから4~5年たったころだろうか、ジュゼッペはホントワール国でスパイ活動をしていた一人の男と出会い、関係を結ぶ。
そんな中、ジュゼッペ自身も二重スパイとなり組織を裏切って情報を漏らした。
自分のいる組織は間違っていると気づいたからである。

 すでにジュゼッペは幹部と呼ばれ部下も多数抱えていた。
自分が命令すればむごたらしい殺戮も簡単なことだろう。
後戻りはできないかも知れない。
しかし、養父浅倉と同じ名前をつけた息子だけは両親の本当の姿に気づく前に何としてもこの組織から抜け出させたい。
超能力人間を探し出すことに気をとられている、今しか抜け出すチャンスはないだろう。
スパイの男が言っていたISOの関係者という人物を何とかここBC島へ誘導することができた。だが、これがもう限界だ。
ジュゼッペは護身用の銃をジャケットの胸ポケットに忍ばせた。


 次の日の朝早く、ベンジャミンは最後のパンを焼きいつも通りに配達を終え、家に戻るとセーラとともにキャロラインをどこへ隠そうかと考えていた。
が、不意にどこからともなくギャラクターのブラックバードが押し入ってきた。
こうなったらもう自分たちの身体(からだ)で隠すしかない。
二人はキャロラインの上に覆いかぶさるようにしてブラックバードの銃弾を浴び絶命した。

仮死状態のキャロラインの脳波は読まれることはなく、彼女はそのまま幽体離脱して神父を呼んだ。


 ギャラクターの本部にいるカッツェは少しいらだっていた。
「キャロライン・コスターの行方は突き止められたのかね?」
側近の部下が応える。
「はっ。ギャラクターの秘密を知る両親の息の根は止めてやりましたが、娘の行方はつかめなかったようです。」
「バカモノ。もっとよく探せ。」
「ESP脳波パターン解読装置が反応しなくなったということですので、もう死んでいると思われますが…。」
「口答えをするな。裏切り者のジュゼッペ一家はどうなった?」
「はい。そちらはデブルスターがバラ爆弾での暗殺に成功したとのことです。」
「そうかそうか。これで邪魔者はいなくなったな。はははっ。」


その後、多くの犠牲を出しながらも忍者隊の活躍で地球は救われた。



---だが、しかし…。


 突然、響子から南部博士のところへ電話があった。
「パパッ。ジョーが…、ジュニアがいないの。」
「落ち着くんだ。キョーコ。君ならどこにいるかわかるだろう?」
「いいえ。ダメなの。あの子が生まれてから、見えないの。ダメなのよ…私。」
「キョーコ…」
「ケンは?」
「あぁ。諸君は皆、イーストン島へ向かった。」
「うっ…。」
「どうした?キョーコ!」
「………」

 南部博士は、急いで車を出させた。
職員寮の自室でキョーコは倒れていた。
「おい、キョーコ!しっかりするんだ。」
「パパ…。ジョーが…ジュニアが…。」
「ジュニアはどこにいるんだ?キョーコ!」
「テルモ岬に…。」
そう言うのが精いっぱいだった。
無理してありったけの能力(ちから)を振り絞ったのだろう、キョーコは南部博士の腕の中に崩れ落ちた。

博士はキョーコをISOの付属病院へ運ぶと、今度はテルモ岬へと向かった。
岬の海岸には人だかりができていた。

 そこには小さな男の子が横たわっていた。
すでに地元の警察が来ていて規制線が張られていた。
IDカードを示してその中へ入ると倒れているその子の顔を覗き込んだ。
その見覚えのある男の子の姿を見て、博士はこれまでに経験したことのない怒りと悲しみの感情が身体中に駆け巡るのを覚えた。
すでにこと切れているその子の細く小さな首には羽根が一本突き刺さっていたのだ。
なんということだ。
一体だれがこんな残酷なことを。
この子の父親がジョーと知っているような…。やはり、ギャラクター!?

変わり果てた姿のジョージュニアに対面した博士は遺体をISOで引き取ることにした。
「責任はすべて私がとる。この子をすぐにISOの付属病院へ運び、司法解剖する。あとの事務処理をよろしく。」

キョーコはもうわかっているだろうか。
しかしどう説明すればよいものか。

 南部博士は病院へ向かう車中でこれまでのことを思い出していた。
キョーコのESP脳波パターンはすでにギャラクターの知るところとなっていたに違いない。
小さな頃は病院にいたので察知されなかったのだろう。

あの頃、一度理由を尋ねた時には、『三人の子持ちじゃ、パパが大変だと思って…』と笑っていたが…。
あの子はそれで自ら病院暮らしを選んだのかもしれない。
成長してからは自分で調整していたのだろうか。

 ジョージュニアを身籠ってから危険なSVR波を浴びることも避けてきた。出産後も母性本能が勝(まさ)ったのか彼女の超能力は影をひそめていた。
ところがジュニアが彼女のESP脳波パターンを受け継いでいたのだ。
そしてギャラクターの罠にまんまとはまってしまった。

「私がうかつだった。総裁Xの再来(リベンジ)を予測して忍者隊を解散させずにおいたのはよかったがキョーコのことまで考えが及ばなかった。許してくれ。ジュニア…、キョーコ。」

 しかしどうしてジョーの羽根手裏剣をわざわざ…?
そうか。父親が誰なのか調べたのだな。
ギャラクターめ…ひどいことをする。

 検死をするために南部博士はジュニアの遺体をISOの付属病院にに運び入れたが、しばらくジュニアの前から立ち去れずにいた。
そのとき、確かに施錠したはずの検死解剖室のドアが音もなくスーっと開いた。
博士が顔を上げるとそこにキョーコが立っていた。

「キ、キョーコ…。」
キョーコは無言で無表情のままジュニアが横たわっているその硬くて冷たいベッドの傍らに立ち、ふっくらとした、だが青白く冷たくなったその頬に触れた。
そしてその首に突き立てられている残酷な羽根手裏剣に手をやった。
その瞬間、キョーコの身体が電気ショックに見舞われたかのようにビクンビクンと2度大きく震えた。

「あーっ。あ、あ、あっ。ジョーッ!ジョーッ!」
母親としての情愛とエスパーの能力がキョーコの頭の中で激しく交錯した。
キョーコはジョージュニアの変わり果てた姿に触れると半狂乱となりその能力(ちから)で自分自身を破壊しかねなかった。
ジュニアを産んで育てている間は影をひそめていたキョーコの「チカラ」が彼の死によって皮肉にも甦ったのだ。

南部博士はジュニアの遺体に取りすがり異常な力で抱きかかえるキョーコを力いっぱい引き離すと安定剤を注射してキョーコを眠らせようとした。

「キョーコ、落ち着くのだ。よく見なさい。ジョージュニアは羽根手裏剣で死んだのではない!すでに殺されてからわざわざ首に羽根手裏剣を…。」
「いやーーーーーっ!!」
キョーコが叫ぶと博士は壁際まで吹き飛ばされた。

「キョーコ、わかっているはずだ。ジュニアを殺したのはジョーではない。冷静になってちゃんと考えるのだ。これではギャラクターの思うつぼだ。」
「ジョー…。」
薬が効いてきたのか、キョーコはその場に力なく倒れこんでしまった。

検死を終えた博士は霊安室の隣りにある控室で仮眠をとっていた。
「ジュニアにはかわいそうなことをした。あんなにかわいい盛りだったのに。」

「ボク、何とも思っていないよ、グランパ。」
「誰だ?」
「ジョーだよ、おじいちゃま。」
「ジョー…ジュニアか?」
「ボクはパパジョーの生きてきた証しに生まれてきたの。パパが生き返って来たのだから僕がいなくなっても悲しまないで。」
「何だって?ジュニア。ジョーは生きているのか?」
「うん。だってここにはいないもの。」
「ここ?」
「そうだよ、ここだよ。」

はっと南部博士は目が覚めた。
私としたことが非科学的な夢に涙するとは…。

 同じ頃、病室に寝かされていたキョーコも夢を見ていた。
「ジュニアはこちらで私とともに楽しく暮らしているよ。安心しなさい。君はまだそちらでやることがあるはずだ。南部博士によろしく。」
姿は見えなかったが、声はあの懐かしいジョーの声だった。
「ジョー?あの羽根手裏剣は?」
「あれはギャラクターのワナさ。君を陥れるためのね。」
その声にキョーコの目からはとどめなく涙があふれた。
「泣かないで、ママ。パパがいるじゃないか。」
ジョージュニアの声にキョーコははっと目が覚めた。

ふとそこにジョーの姿があったように感じた。
(ジョー?変ねぇ。生きているならなぜ…。それにジュニアといたジョーにそっくりのあの人は…?)
そこまで考えて、キョーコは気がついた。
「ジュゼッペさん!ジュゼッペ・アサクラがジュニアを天国へ導いてくれて、今も一緒にいるのだわ。」

その時病室のドアをノックして南部博士が入ってきた。
「健たちが無事に帰ってきたよ…。」

 博士はベッドの横にあった椅子に腰かけて続けた。
「すまなかった、キョーコ。ジョーの代わりを探すことに夢中になっていて君もギャラクターに狙われている身だということに……。もう少し注意を払うべきだった。だが今またゲッツの代わりを探さなくては…。」

「パパ…。」
「…ん?どうした、キョーコ。」
そう言ってキョーコの顔を見た博士はギョッとした。
キョーコの美しいエメラルド色の瞳が金色に輝き三白眼となってギロリと博士を見つめていたのだ。
それはキョーコに「チカラ」が完全に戻ったことを意味していた。

「ジョーは…ジョーは生きて・い・るか・も・しれ・ない…」
「キョーコ、ジョーは死んだのだ。ジョーの代わりを探して…。」
「ダ・メよ、パパ。…ジョー・でな・ければ・乗・りこな・せ・ない・マシ・ンを・作って…。」
キョーコは久しぶりに戻った自分の「チカラ」のコントロールができていないようだった。
病室に置いてあるコップやタオル、テレビまでもが浮き上がってしまっている。

「わた・しが・ジョ・ーをひ・こう・きにの・せた…し・ぬとわ・かっ・ていた・のに……ジュニ・アは…わ・たしの・み・がわ・りになっ・てし・んだ…ガ…ガ、ゴ…ゲ・グ・グ…」
キョーコは自分で自分の首を絞めた。
「い、いかん。誰か、急いで安定剤を…!」
博士がナースコールを押すと、スタンドの電球がポンッと砕けた。

「ジ・ョー・は帰・って・来・るわ…。」
頑強な看護師二人に押さえつけられて安定剤をうたれたキョーコはそう言うとやっと眠った。

南部博士はすぐさまキョーコを冷凍睡眠装置に入れると外部との接触をすべて遮断した。
(キョーコ。ジュニアのカタキはきっとガッチャマンたちがとってくれる。ここでしばらく眠っているのだ。)

「ジョーがどんな姿になって還ってきても愛していると伝えてください。」

博士の頭の中にだけキョーコの声が響いた。

(おわり)

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