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『特命』

ゴッドフェニックスで無事に別荘へと帰ってきた南部博士だったが、総裁Xの力を目の当たりにしてこれからの戦いが相当困難なものになると考えざるを得なかった。
カッツェの正体を見破ることはできたが、メガザイナーによってジョーの素顔がバレてしまった。
 誰からも連絡が来ないように引っこ抜いておいた電話線を繋げると割れてしまった窓ガラスの修理をまず頼んだ。そしてデスクの上で濡れたままになっていたカッツェの過去を記したノートを乾かしがてらまた見直してみることにした。
 カッツェの生まれ故郷の近くでは本当に核実験などはなかっただろうか?もう少し範囲を広げてもう一度検証してみよう。
総裁Xの力だけでカッツェをミュータントを作りあげることが本当にできたとしても、彼の出生地の近辺を詳しく調べる必要はまだまだありそうだ。

 デスクの中に仕込まれているボタンを押すと奥の壁がスーッとスライドして世界地図が現れた。
パチンとスイッチを入れるとこれまでに叩き潰したギャラクター基地の一つ一つがその地図の上で赤く点滅しはじめた。
博士は2~3歩下がるとその地図をじっと眺めて丹念にチェックしていった。
「ここはヒマラヤ・・。そして・・」
そしてはっと気が付いた。
「ここは・・!?」

博士は急いでもう一度受話器を取るとあのとっておきの男たちに連絡を取った。

「すまないが、二人でクロスカラコルム周辺の探索をしてくれないかね。いや、空からではなく地上からだ。あの付近はいつも霧が深く磁場が強いためにゴッドフェニックスによる上空からの哨戒ができなかったのだ。君たちが健太郎・・いや、隊長と同じように空の男であることは充分承知しているが・・」
 南部博士の遠慮がちな物言いに対して受話器の向こうから正木の力強い声が返ってきた。
「鬼石も私も博士からの指令があるのを今か今かと待っていたのですよ。鬼石はいま、スピーカーホンで博士の命令を聞いて声なき声を上げて喜んでいます。さっそく支度をして行きます。隊長の一周忌までには何かしらの成果を上げたいものです」

南部博士は健太郎が逝ってからもうそんなになるかと思いながら「頼んだぞ」と言葉を掛けて受話器を置いた。

(おわり)

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『不在』

ジョージがいなくなってから何年たっただろうか?
アランは時々こうしてジョージの墓に花を供えに来るのだが、そのたびにジョージはここにはいないんじゃないかと思っていた。
それは両親の墓と離れてこんなところにポツンと埋葬されているのが何よりも不自然だったからだ。
 通い慣れたタイル敷きの階段を上がって教会に戻るとヴィターリ神父が礼拝堂の入り口に立ってアランを迎えてくれた。
「お客さんがみえているよ。いま懺悔室にいる」
そう言うと神父はアランと入れ替わりに礼拝堂を出て行った。

「チョコレートを作ったの。食べて」
アランが懺悔室に入るや否や、ソフィアは小さな箱を差し出した。
「ギャラクターの家の子のものなんか食べないよ」
アランがそう突っぱねるとソフィアは悲しそうな顔で
「私、アランのお嫁さんになりたいのに」と小さな声でつぶやいた。

「わかったよ、ソフィア。君がギャラクターをやめるというなら考えるさ。でもそういうわけにはいかないだろう?今だってこうしてこっそりと懺悔に・・」
「できるわ!」
ソフィアは今度は大きな声でそう叫ぶとチョコレートの箱をアランに投げつけて懺悔室を飛び出して行ってしまった。

 赤いハート型の小さな箱を結んでいたピンク色のリボンがほどけてチョコレートがアランの服の上にこぼれた。
アランはそれを拾うと口に入れた。
ジャリジャリっと音がして砂糖の甘さが口いっぱいに広がった。

 ギャラクターがこの世から消えればソフィアと結婚できて、もしかしたらジョージともまた会えるかもしれない・・。
ふとそんなことを考えたアランだったが、それは不可能なことさと小さくかぶりを振った。


(おわり)

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ツリーを飾れ

スナックジュンのカウンターでジュンはため息をついた。
「あーぁ、誰かさんがツケを払ってくれないからクリスマスツリーが買えないわ」

健とジョーは顔を見合わせると箱からオーナメントを取りだしてジュンの髪にかざした。
「きれいだぜ、ジュン」
「緑の髪によく似合うぜ」

二人の腹に肘鉄がヒットした。



お題ったーではないのですが140文字制限でクリスマスフィクを書いてみました。
(ま、お題は「クリスマス」ということで^^;)

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クロスカラコルムへ

『クロスカラコルムへ』

                   by があわいこ


 空港近くの中古車屋に立ち寄ったジョーは乗ってきたオレンジ色のレーシングカーがいくらになるか訊いた。
言い値でよかったがそれでクロスカラコルム近くまで行く飛行機のチケットが買えるかどうかが問題だ。
足元を見られるだろうか?もっとも片道でいいからな――そう思ったらフッとため息が出た。
いや、それよりも査定に時間がかかると困る。1分でも早く行きたい、行かなければならない。
 最初にジョーを迎えた店員はジョーから鍵を受け取ると書類に何か書きこんだ。査定士らしい男が出て来ると鍵は彼に渡された。
査定士はおもむろに車の周りを2周するとその鍵でエンジンをかけアクセルをふかした。
慣れた手つきだがゆっくりとじらしているように感じる。しかし、ジョーは腕組みをしてなんでもないようなふりをした。
エンジンをかけたまま車から降りた査定士はボンネットを開けると
「それで、どこまで行く気だい?」と顔を上げずにジョーに問いかけた。
「はぁ?」
ジョーが聞き返すと、査定士は表情を変えずにバタンとボンネットを閉めた。
「お客さん、飛行機でどこかへ行こうと思っているんだろう?」
事も無げにそう言う査定士に
「どうしてわかった」
と、ジョーは警戒しながら彼を睨んだ。すでに右の隠しポケットに手をかけている。
「ここに車を持ちこむお客さんのほとんどは航空券を買おうとしていますからな」
そう言って査定士は初めてニヤリとした。
ジョーは「クロスカラコルム・・」と言おうとしてやめた。
もしかしたら査定士がギャラクターかも知れないと思ったからだ。
どうもジョーは出会う人間がギャラクターだったということが多すぎる。
「さぁな。地球の反対側だ」
よく響く声でジョーは嘯いた。
「なるほどね」
査定士は軽く頷いてさっさと事務所へ向かって行ってしまった。
ジョーも自然にそのあとを追うようについて行った。

 査定士はチン!と音をさせるとレジを開け無造作にアメリスドル札を何枚か抜くと口をわずかに動かしながらそれを数えた。
そしてその札束をまとめて半分に折ると人差し指と中指に挟んでジョーの胸の前に突き出した。
「これだけあれば地球を一周できるぞ」
ジョーはキツいまなざしで札束を睨んだが、数えずにそれをポケットにねじ込んだ。
その様子を見ながら鑑定士は
「アレはメンテナンスやら何やらで売りに出すまで1週間から10日ほどかかる。気が変わったらその期間内に戻ってくるんだな。もちろん金は返してもらう」
と少し早口で事務的に言うとレジを閉め、誰かの名前を呼びながらあっという間に事務所を出ていった。
「1週間から10日か・・」
気がついたベッドの上でカーテン越しに昨日の今ごろ聞いた医者の言葉をジョーは遠い昔のことのように思い出していた。

礼を言おうと再び事務所の外へ出たジョーだったが、すでに査定士は次の客の相手を始めていたし、レーシングカーは他の店員がもう車庫のほうへ運んでしまっていた。

 色とりどりのかざぐるまや万国旗でにぎやかに飾りつけをされた中古車売り場にポツンと残されたジョーのすぐ上を大きな旅客機が飛び立って行った。
一人ぼっちは馴れているはずだったが、言いしれない孤独感がジョーを襲った。

別荘の窓越しに見送ったゴッドフェニックスは、健たちみんなは・・どうしているだろうか。
G-2号機は健に格納された時、いつものようにタイヤをキュッと鳴らしただろうか。
「火の鳥になって突っ込む時はお前が先頭だ。頑張るんだぞ」
あいつに最後に掛けた言葉は柄にもなくセンチメンタルになっちまったなとジョーは思い出して口角の片方だけで苦笑いした。

ゴッドフェニックスを見送った窓から飛び出したジョーは、その窓辺にじっと立ち尽くしている南部博士がどんどん小さくなるのをずっとバックミラーで見ていた。
もう二度と会うことはないだろう博士の姿をちらりと思い出したが小さくかぶりを振ると前を見据えた。

 俺はこれからベルク・カッツェを仕留めに行く。だがこれは科学忍者隊G-2号、コンドルのジョーとしてではなく、親をギャラクターに殺されたジョージ浅倉としての復讐だ。相討ちなら上等だぜ。

「この地球をギャラクターの魔の手から守ることができるのは、科学忍者隊G-1号大鷲の健、またの名をガッチャマン、おめぇだけだ。リーダーなんだからよ、健。俺がいなくたってちゃんと地球を救ってくれよ、頼んだぜ」
そう心の中でつぶやきながらジョーは振り向くことなく空港へと歩きだした。



(おわり)

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ヒッピー

「トック・・?南部博士、なんですかそれは?」

 南部博士の別荘にできたばかりのミーティングルームへ呼ばれた健がさっそく質問した。ジョーはその隣りでいつもの腕組みをしている。
「これから君たちが科学忍者隊として訓練をしていくことはわかってもらえたと思うが、普段は普通の市民として生活してもらうことになる」
「それもわかっています、博士。健の質問に答えて下さい」
ジョーは身体を斜めにゆすった。
 博士はそんなジョーを無視するかのようにテーブルの上に置いてあったスイッチを入れた。すると中からOHPがせり上がってきた。
「見たまえ。これはユートランドという街が建設されているところだ」
正面のスクリーンに工事現場が映し出された。
「実はここは裏からこっそりとISOが管理することになっている。が、表向きはヒッピーの若者が多く集まる特別地区となるのだ」

「へ、特別地区・・略して特区か」
ジョーが顎に手を当ててニヤリとする。
「で、博士。なぜヒッピーなんですか」
健が映像をまっすぐ見つめながら再び質問した。
「ヒッピーは自由に生きる若者たちだ。ヒッピーならば昼間から仕事もしないで街をぶらついていても誰からも怪しまれない」
 博士はそう答えながらOHPのコマを進めた。すると今度は長髪でTシャツ姿の青年たちが現れた。
「これが代表的なヒッピーたちだ。君たちも普通の市民シビリアンスタイルの時はこのような服装になってもらう」

「髪も伸ばすんですか?」
二人は同時にそう言ってお互いの顔を見合わせた。
博士は軽くうなずいて続けた。
「これからはヒッピーの中に紛れてユートランドで暮らすのだ。だから君たちにもそれらしい格好をしてもらう」
博士は再びスイッチに手を伸ばした。OHPが下がっていくと何事もなかったように普通のテーブルに戻った。

「ところで・・健」
そう言って博士はテーブルの向こうにある椅子に座り直した。
「ジュンに『甚平と一緒に暮せるお店を持ちたい』という希望は承諾したと伝えてくれたまえ。未成年なので開業場所はもちろん特区の中だが」
「わかりました、博士。ジュンのやつ喜ぶでしょう。甚平も」
健の青い瞳も輝いた。
「君は・・」
博士が言いたいことは健にはわかっていた。
「いいんです。俺は親父の飛行場さえ守れれば」
「そうか・・それでは今日の用件はおしまいだ。下がっていいぞ」

 その言葉にジョーが反応した。
「え、博士。おしまいなんですか!?」
「ジョー。君のF1レーサーになりたいという希望は承っている」
博士は神経質なほどきちんとテーブルの下に椅子を並べ入れている。
「なんだよ、『これから科学忍者隊として厳しい訓練をしていかなければならない代わりに任務がない時に何かやりたいことはないか。希望があったらいいなさい』といったのはそっちだろ?」
ジョーはテーブルを平手でパシッとたたくと博士を指さした。
「ジョー、やめろ。博士に向かって・・」
健がジョーの肩に手をやる。
ジョーはその手を払いのけた。
「おめぇだって目の前で親父が殺されればわかるぜ。この悔しさがよ」
「二人ともやめたまえ。ジョーも本当はわかっているはずだ。F1レースに出場するには・・」
説明しようとする博士の言葉を遮ったのはジョーだった。その顔には皮肉な笑みが浮かんでいた。
「わかってるって、博士。ちょっと言ってみただけさ。俺も竜みたいに『腹いっぱい食って海の近くでの~んびりとハンモックなんかで寝られれば』それでもいいさ」

 ジョーの言葉を聞きながら博士はテーブルの下からビニールに包まれた何かの模型を出した。
「まだ用地の買収が済んでいないのでこれは仮のものなのだが」
そう言いながら博士がビニールを剥がすとサーキット場のミニチュアが出てきた。
「場所的には特区のはずれに建設を予定している。きちんと出来上がってからジョー、君には見てもらいたかったのだが・・」

「・・は、博士・・おれ・・あ・・」
ジョーは博士の顔とミニチュアを交互に見るが言葉が出ない。
「任務があるから実際のF1レース出場は難しいが、ここでいくつかレースを開催しようと考えている。その時は思い切り活躍してくれたまえ。ISOにはそれとは気づかれないようにしてプライベート・チームを組むように頼んである」
「ジョー、よかったな。これから頑張って髪を伸ばそうぜ」

健のジョーへの言葉はちょっとだけ的外れなような気もするが、二人の髪がヒッピーのように伸びたころにはプライベートレーサーとしてサーキットを飛ばすジョーの姿が見られることだろう。

(おわり)

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