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一期一会

「ニッポンの方ですか?」

ホントワール国に来て初めてそう聞かれた健太郎は顔を上げた。
そこには日本人とは到底思えない灰青色の瞳をした彫りの深い男のかおがあった。

 ここは美しいホントワール国には似合わない場末のバーだ。
もうすぐクリスマスだというのにこのバーがある界隈は物乞いと娼婦が夜の街を支配していた。
表通りを美しく飾るイルミネーションも遠い世界の出来事のように思える。

独りこの国に潜入して長い間諜報活動をしているが分厚い国家の壁はそう簡単には破れなかった。
今日も何も収穫はなく街の喧騒を避けるようにここで安酒を呷っていたのだ。

「君は?」
健太郎の問いに答えずにその男は片方の口角を上げてニヤリ顔を作ると
「私にも同じものを」
そう言ってカウンターの隣りに座った。

「私の名前はジュゼッペといいます。私の育ての親が日本人でした。その父が亡くなってからずいぶんと長い間日本語を話していません。私の日本語はおかしいですか?」
健太郎はなるほどそうかと思いながら軽くうなずいた
「いや、大丈夫ですよ。ジュゼッペさん。申し遅れました。私は鷲尾健太郎というものです。」
健太郎が右手を出すとジュゼッペはその手を固く握った。

薄暗い店内に置かれた小さなろうそくが揺らめき二人の影も揺れていた。

 ちょっと乱暴に置かれたジントニックを一口含むとジュゼッペはフッと小さくため息をついた。
「私には妻ともうすぐ8歳になる息子がいます。いま、私の故郷の島で暮らしているのですが・・」
健太郎はその言葉を聞いて驚いた。まさに自分と同じ境遇ではないか。
本来なら初対面の見ず知らずの人間にプライベートな話などすることはありえないのだが、思わず言葉に出してしまった。

「奇遇ですな。私も故郷くにに妻と一人息子を置いてきました。その息子はじきに8歳です」
「本当ですか?鷲尾さん!」
ジュゼッペの鋭い灰青色の瞳が大きく見開かれた。
だが、その瞳はすぐに憂いを帯び視線は水滴が付いたグラスに注がれた
「私は今、その息子に対して恥ずかしい仕事をしています・・」
消え入りそうな小さな声でそう言うと、ジュゼッペはジントニックに添えられたライムをグラスに絞りいれた。
そして
「自分がどんな仕事をしているのか、子供に本当のことを話せないって・・こんな辛いことはありません」
そう続けたのだった。

 健太郎は少し残っていた自分のジントニックを飲み干すと、薄暗いカウンターの前をじっと見つめながら答えた。
「私は・・私も実は自分が本当はどんな仕事をしているか家族には内緒です。それどころか、私はもう死んだことになっているのです。別れた時、息子はまだ4歳でした。今の仕事が終わっても、もう息子には会えないかも知れません。」
健太郎の視線の先には幼かった息子の顔が浮かんでいた。

ジュゼッペも健太郎と同じようにカウンターの向こうを見つめていた。
そこにはにっこり笑う愛息の顔があった。
「そんな酷いことがあるでしょうか・・?私は息子に養父と同じ名前を付けました。日本人の父のことを尊敬し、誇りに思っていましたから・・」

ジュゼッペは残っていたジントニックを一気に空けると、そのグラスを高く上げて「おかわりだ。こちらにも」とバーテンに注文をした。

「鷲尾さんはいつかきっと必ず息子さんに会えますよ」
そう言ってグラスを元に戻したジュゼッペは一息ついた。
「どうかなぁ」
そう言う健太郎にジュゼッペは
「私は、決心しました」と力強く話し始めた。
「今の仕事は辞めます。すぐには無理かも知れません。難しいことが多いでしょう。でも、息子にはやはり父親である自分のことを誇りに思ってもらいたいですから」

新しいジントニックが二人の前に置かれた。
「同じ歳のあなたの息子さんに」
「同じ歳の君の息子さんに」
そう言って二人は杯を合わせた。

「鷲尾さん、今夜は楽しかったです。久しぶりに日本語を話せたし」
「いや、こちらこそ」
健太郎はジュゼッペの話を聞いて心の片隅でもしかしたらこの男はホントワール国の秘密を知っているかも知れないと感じ始めていた。
それはジュゼッペも同様で、自分が今所属している組織について嗅ぎまわっているスパイの存在を思い出していた。

「鷲尾さんには悪いけど、これからクリスマスプレゼントを買って島へ帰ります。息子が待っているのでね」
「それはうらやましいな。何を買うつもりですか?」
「サンタには『青い車』をお願いしたと言っていましたのでミニカーを買って行きます」
ジュゼッペは父親の顔になっていた。
そして濃い青色をしたツイードのスマートなコートを着ると揃いのコッポラ帽を被って、もう一度健太郎と握手を交わした。
「いつかまた会いましょう。息子たちも一緒にね」
「あぁ、そうだな」

 ジュゼッペが席を離れても健太郎は別れた時の息子の泣き顔を思い出して、そのままカウンターに座り直すとグラスを見つめていた。
そして、ジュゼッペがホントワール国ではフリー(審査なし)となるカードで酒代の支払いをしたのをついに見ることはなかったのだった。


(おわり)

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ジョージ浅倉の息子( 蛇足)

ジョージ浅倉の息子( OVA 蛇足)



「ママ、ママ」

身体をゆすられて意識を取り戻した。
「え?ここは何処・・」

 今日子はリビングとダイニングの境目に置かれたカウチで目を覚ました。
いつもは白い天井が夕焼けに染まって真っ赤に見える。

小さなころから何度も見る同じような夢・・
これってなんなのかしら・・?

ピンポーン♪
玄関のチャイムが鳴っている。

「ママ、パパの”おかえい”だよ」
「あら、しまった。ちょっとのつもりがこんな時間までお昼寝しちゃったわ」

 白地に黄色いチューリップがデザインされたサロンエプロンをかけなおすと今日子はインターホンの前へ行き、モニターに映っているジョルジョの顔を見て吹きだした。
「パパ、玄関の前でそんな百面相はしないでちょうだい。穣(じょう)がまた真似するでしょう?」
「インターホンで言ったらご近所に聞かれるじゃねぇか、早く開けてくれよ」
今日子がドアのロックを解除すると穣が玄関へ駆けだした。

 ジョルジョはイタリア人でF1のレーサーだ。
レースのない日はこうして早々と帰宅して息子の穣と日本式のお風呂に入ることを何よりも楽しみにしている。
今日子は日本人だが友人が冗談で応募したレースクイーンのコンテストに合格してあれよあれよという間にレーサーの中でも「キュートな笑顔のキョーコ」として評判になっていった。

 ある日いつものように今日子が大きな傘を持ってカメラのフラッシュを浴びているとつかつかとジョルジョが来て、いきなり腕をつかむと「やっと会えたね」と声をかけてきた。
イタリア男の典型的な「挨拶」とわかっていたが、この日の今日子は素直に彼のナンパに応じることにした。
灰青色の瞳になぜか懐かしさを覚えたからだ。


「パパ、おかえい~!」
「ただいま~。ジョー、いい子にしてたか?」
上下を麻の生成りのスーツで身を包んだジョルジョは枯葉色の髪をかきあげると玄関で高々と穣を抱き上げた。
「パパ。おヒゲ、痛いぉ~」
 ジャケットの間から見える陽に焼け鍛えられた素肌の胸の前で穣を抱(かか)え直すと、ジョルジョはマシュマロのような息子の頬にキスをすると軽く噛んだ。
同じ灰青色の瞳がそっくりの笑顔で見つめあう。

「ママ、シンダ」
 穣の言葉に風呂場で湯加減をみていた今日子がどきりとする。
だが、「ヒャッ、ヒャッ、ヒャッ・・」と笑うジョルジョの声にほっとする。
「そうかそうか。ママはまた昼寝してたんだな。じゃ、今夜は寝かせないようにするかな?」

 今日子はときどきふと思う。
ジョルジョとは生まれる前から知り合いだったような気がすると・・

(おわり)

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ジョージ浅倉の息子F 完全版

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窓辺

夜中の12時を告げる古い柱時計の音で南部博士は書類から目を上げた。
どこかで風が舞っている音がする。
どうやらこの別荘の最上階にある蔵書室の窓がいているようだ。

博士は、そばにあった羽根を模したレターオープナーを書類の間にはさむとイスから立ち上がった。
そしてゆっくりと階段をあがっていく。

そっとドアを開けると、思った通り窓が開いていてその下にある机に突っ伏して眠っている人影が月の光でぼんやりと見える。

「健、こんなところで寝ているとまた風邪をひくぞ。」
「・・うぅん」
ブルーの瞳がうっすらと開いた

 博士は健の額に手を当てた。
熱はないようだ。
「うむ、大丈夫だ」
「夢を見ていました」
まだ眠そうな声だ。
「肺炎が治ったばかりなんだから注意せねばいかん。仕事に穴を開けるようではガッチャマンとして・・」
健は大きく伸びをしながら答えた
「あぁ~あ、あいつ、何か言いたそうだったのにな」

博士はその言葉を聞いて胸がズキンとした。彼もまたジョーのことを思い出していたからだ。

 クロスカラコルムから帰ってきてもガッチャマンたちに休みはなかった。
未曽有の大惨事から復興しようとする人々を見守るようにほぼ毎日世界各地へパトロールに出かけているからだ。
それは常に何かをして余計なことを考えまいとしているようにも見えた。

だがやはりレーダー前のシートに誰も座っていないのを見ると何とも言えない悲しく寂しい気持ちが胸に迫ってくるのだった。

「ジョーの夢を見ていたのかね?健・・」
博士は机と反対側にある古い長椅子に腰掛けるとポケットチーフで眼鏡を拭きはじめた。

「ギャラクター本部へ突入する直前、クロスカラコルムの草の上に横たわっているジョーの顔を一瞬、見たんです。あいつはかすかに微笑んでいました」
それは絞り出すような声だった。健は机の前に並んでいる本の背表紙を睨んでいた。

「もういい、健。その時の報告はすでに受けている」
「いいえ、博士。俺はそのジョーの屍を踏み越えて行ったのです。そして再び地上へ出たとき、せめて・・せめて拾ってやろうと思っていた骨のひとかけらも遺ってはいませんでした」
ブルーの瞳が潤んでいた。
「健・・」

健はその瞳を伏せた。長い睫毛の下に光るものがあった。
「博士、博士も覚えているでしょう?ジョーがBC島へ一人で墓参りに行った時のことを」
「うむ。あの時もひどい怪我をしていた」
博士は指先で口ひげを撫ぜた。

「あの時、俺はジョーに言ってやりました『ジョー、基地へは一緒に帰るぞ!』ってね」


そうだ、あの時は・・

 健と竜がジョーをゴッドフェニックスへ運びいれる間に、ジュンと甚平がBC島を駆けずり回ってどうにか医者を二人連れてきた。
一人は外科医だったが、もう一人は高齢の女性でなんと産婆だった。

しかし、彼女はジョーの顔を見るなり『この子はペッピーノ(※)の坊やかい!』と叫んだ。
後からわかったことだが、どうやらジョーを、そしてジョーの父親も取り上げたその人だったようだ。

そしてゴッドフェニックス内でジョーの緊急手術が始まった。
南部博士がモニター越しに的確な指示を出してそれは進んでいった。

 だが、ジョーは血液を大量に失っていた。
ゴッドフェニックスに保管してある救急用のものではとても間に合わない。
すると産婆のエルダが心当たりがあると言うのでジュンがゴッドフェニックスから連絡を取るとジョーと同じ血液型の男性が何人も現れたのだ。

 みんなエルダが取り上げた『エルダの子供たち』だった。彼女は彼らの血液型まで覚えていたのだ。
その中にはアランの教え子たちもいた。
事情は知っていたが、ジョーが『アラン先生』の幼馴染みだったとわかると日頃からアランが教えていたことを実行するんだと言って集まってくれたのだ。

「自分が困ったときに助けてもらったらうれしいと思う人は、困っている人がいたら助けてあげましょう。復讐は復讐を呼ぶだけです。人を憎まず愛し合いましょう」

アランはこの世から消えたが、その遺志は教え子たちに、そしてまたその子供たちへと受け継がれていくことだろう。


こうして手術は無事終了した。

 ジョーはゴッドフェニックスに備え付けの高気圧酸素カプセルの中に寝かされていた。
健はその寝顔を見てほっとしていた。
ちょっと笑っているようだったからだ。

何日もしないうちに包帯はしているものの驚異的な回復力でジョーは起き上がれるようになり、アランの葬列を丘の上から健とともに見送った。
そして竜舌蘭の花を散らしながらゴッドフェニックスは飛び立ち、ジョーは仲間とともに無事三日月基地へと帰還したのだった。


「ジョーの頭に残っていた傷はその時のものだったのだろうか?帰ってきてすぐきちんと精密検査をするべきだった・・」
南部博士は長椅子から立ち上がると窓辺へ行き、少しだけ開いたままになっていたその窓を下へずらして閉めた。
ふっと風の音が小さくなった。

「でも博士、アイツは検査なんか受けませんよ。『俺は不死身のコンドルのジョーさ』なんて言い張ってね」
健の言葉を背中で聞きながら博士は窓の向こうに広がっている暗い夜の海を見つめていた。
健はさらに続けた。
「もし命が助かったとしてもたくさんの管に繋がれてベッドに縛り付けられた上に食事やトイレの世話をされてまで生きていくことをあのジョーが受け入れると は思えません。もちろんそれを望むこともしないでしょう。ジョーにとってそれは死ぬことよりつらいことかも知れませんからね」
凛とした健の声が静けさを取り戻した部屋に響いた。

「そうだな・・しかし、あの子は・・私が・・」
博士の声は力なくかすかに震えていた。

 彼が・・ジョーがギャラクターの子ではないかと博士はうすうす気づいていた。
ジョーの両親はただ殺害されたのではなく『処刑』されたように見えたからだ。
あの時はまだよくわからなかったが、ギャラクターがいずれ人類にとって危険な組織となるようなら敵の駒を持っていることも悪くはないと考えたのだった。
『両親の敵討ち』という言葉一つがジョーを支えていた。博士はいつしかジョーを頑張らせる魔法の言葉のようにそれを使ってしまっていた。
子供のころの孤独な日々も忍者隊としての苦しい訓練もそれで乗り越えてきたのだが・・

「私が浅はかだった・・あの時、ご両親と一緒に静かに死なせてやるべきだったのかも知れない」

 健は死ぬ時は一緒と誓ったジョーを独り置き去りにしてきたことを悔いていた。
同様に博士は小さなジョーを両親から引き離して無理やり蘇生し、故郷から遠く連れ出してきたことを後悔していたのだった。

窓ガラスには暗い表情の博士が映っていたが、高く上がった月がその小ささとは逆にこうこうと輝いていた。


そう、あの日もこんな夜遅い時間だった。

 南部博士は時がたつのも忘れて調べものに夢中になっていた。
その時だ。
真夜中だというのに自室のドアがコンコン!とノックされた。

「パーパ・・」
ジョーだった。
BC島から病院へ直行し、やっと傷が癒えても故郷へは帰れず、両親を失った時の記憶だけが鮮明に蘇る・・そんなジョーを南部博士は自分の別荘へ引き取って様子を見ることにしたのだ。

「どうした、ジョー。また怖い夢でも見たのかな?」
「置いてきたの、スポーツカーのおもちゃ」
前髪が汗でおでこに張り付いている。目を何度もこすったのか、目の周りが赤くなって灰青色の瞳も充血している。
父親の夢を見たのだろうか?ジョーが博士のことをパパと呼んだのは初めてだった。

「そうか、だが荷物を島へ取りに戻ることはできないぞ」
「クリスマス・・去年のクリスマスにサンタがくれたんだ。パパが頼んだの。もう会えない?」
泣きじゃくりながら大きく息を吸ったので今度はむせて咳き込んでしまう。
もう泣くのはやめようと思えば思うほど嗚咽が止められなくなってしまっていた。

博士は小さなジョーを思いきり抱きしめると背中をそっと叩いた。
「ようし、では今年のクリスマスに私がスポーツカーを作ってやろう。何色がいいかな?」
「あ・お・・」
「わかった。男と男の約束だ」
博士はジョーの汗と涙にぬれた柔らかな頬を手で拭い軽くつねると微笑んだ。

「それでは、鼻をかんだら今日はもう寝よう」
南部博士はBC島で助けた時のようにジョーをその胸に抱くと部屋へ運んだ。
その途中でジョーはもう眠ってしまった。
博士はあの時よりもずいぶんと重たくなったものだとベッドへ寝かせながら思った。


「そうですか?俺がここに来る前にそんなことが・・ちっとも知らなかったなぁ」
健は南部博士の背中にそう言葉を投げかけた。その背中が少しだけ小さく丸くなったように感じた。

窓から見える海の向こうが少しだけ明るくなって来た。


「そろそろパトロールへ出かける時間だ、健」
「はい。・・ちょっと腹ごしらえをしてから行きます」
健がニヤリとする。
博士はその顔を見て少しほっとしたように言った
「うむ。久しぶりに二人でアレを食べるか?」

二人は階下のキッチンへと降りて行った。

 博士が冷凍庫から『ISO特製ランチ A-3』を取り出すと健はVサインを出した。
いや、「2つ」という意味だ。
博士は11歳で母親を亡くした健を引き取ったころのことを思い出して頬の筋肉を緩ませた。

 食べ盛りの男の子が二人もいる男所帯でも立派に育ってくれたのはこれのおかげもあっただろう。
国際科学技術庁が完璧なレシピをもとに総力を挙げて作成したもので、季節や個人のデータにより数種類のメニューが定期的に入れ替わるのだ。
電子レンジで解凍している間にコーヒーメーカーからはモカブレンドのいい香りがしてきた。

「それでギャラクターが自滅した原因はわかったのですか?」
健がサーバーからカップへコーヒーを注ぎながら訊いた。

「いや。君の報告通り最後の分子爆弾がマントル層内ではなくギャラクター本部の装置内で爆発したことはわかった。そしてそれは機械の歯車が外れたことによるものだということもわかった。だが、その外れた原因というか理由がどうしてもわからないのだ」
博士はスプーンでコーヒーをかき混ぜながら静かに答えた。

「ジョーが何かしたのかも知れませんね」
「あの身体でか?」
「そういう男ですよ、アイツは」
健はコーヒーを一口すすると息をついた。

「うむ。理論的ではないし科学的裏付けもない・・が、しかしそれは考えられるな」
「いま、クロスカラコルムの土を分析しているのでしょう?」
「あぁ、そうだ。全てを掘り返している」
コーヒーを口に運ぶと博士は答えた。

「何か出てきたらわかるかも知れませんね。例えば、ジョーの羽根手裏剣の痕跡とか・・」

チーン!

健の言葉には南部博士ではなく、電子レンジが応えた。

「へ、これも科学か。科学って美味うまいなー♪」
そう言いながらランチを頬張っていた小さなジョーの声が聞こえたような気がした。


(おわり)



※ジュゼッペの愛称

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ストレイカー司令官はカウチで眠る

10年の眠りから覚めた少女が宇宙人にその運命を翻弄されて悲惨な最期を迎えた日の午後、ストレイカーは重く沈んだ気持ちでシャドー本部へと戻って行った。

すると、ミス・イーランドに面会人がいることを伝えられた。
「東洋人の若い女の子ですよ。今日の朝10時に来るように言われたとかで、ずっとお待ちになっています。」
「ふむ、女性の雑誌記者の取材は、断ることに決めていたのだが…?」
ミス・イーランドは、タイプを打つ手を止めて、ストレイカーの顔をじっと見つめて言った。
「専務ではなく、司令官に面会です。でも、彼女は紛れもない民間人ですわよ。」

そこまで聞いたストレイカーは、はっと気がついた。

「ミス・イーランド、フォスターとフリーマンを呼んでくれたまえ。彼女を司令部へ案内する。」
そういうと、オフィスへと入っていった。

オフィスにはスカイブルーのミニワンピースに白いブーツ姿のスレンダーな女の子が額に入ったポスターを見ていた。

「待たせてしまったね。えっと、マ・リ・フ…ギ・ウヮ・ラ…?」とミス・イーランドに渡されたメモを見ながら、名前を読むストレイカーに微笑みながら振り向いた女性は、「マリ・ハギワラです。マギーと呼んでください。」と言って白くて小さな手をさしだした。
その手を握ったストレイカーにマギーはさらに続けた。
「はじめまして。お会いできて嬉しいです。コンピューターのリカバリーにまいりました。」と、きちんとした英語で挨拶をしたのだった。

そう、シャドーのコンピューターは少し前から不具合を起こすことが多くなってきていた。10年も使っていては古くなるわけだ。
その時々でシャドーのコンピューター技師たちによって何とかその場をしのいできたが、いよいよ飽和状態となってきたのだ。
これをなんとかしようと専門の知識を持った優秀な人材を探していたところ、彼女の名前がリストにあがってきたのだった。

まもなく、フォスターとフリーマンがオフィスに入ってきた。
「エド、ポールから聞いたぞ。あのお嬢さんは大変なことになってしまったらしいな。」
人間の命をもコントロールできる宇宙人の存在を一瞬ではあるが忘れていたストレイカーは、それには答えずに
「アレック、新しいコンピューター技師を紹介しよう、ミス・マギーだ。」

「はじめまして。マリ・ハギワラです。マギーと呼んでください。えーと…。」
「アレック・フリーマン大佐に、ポール・フォスター大佐。」
「で、新しいコンピューター技師は?この子の父親かい?」とアレックはわざとオーストラリアの訛りで訊ねた。
「いや、彼女がそうだ。」
「どう見たって高校生じゃないか?」
そういいながら二人はやや儀礼的にマギーと握手した。

「さてマギー、これから少し驚いてもらうよ。」
ストレイカーはそういうと入り口のドアを閉め、デスクの上のシガレットケースを開いた。
「おい、エド!」
「司令官、まさか?!…彼女を!?」

ストレイカーはあわてる2人の前にそのシガレットケースを近づけた。
『フリーマン大佐及びフォスター大佐の声と認めます』

すると突然マギーの足元ががくんとゆれた。いや、自分だけではない。なんとこの部屋全体が動き出したではないか?!
窓の外を見たマギーは自分の目を疑った。まるでエレベーターのように景色が上へ昇っていく。いやこの部屋にいる自分が部屋ごと地下へ降りていくのだ。

マギーは思わずストレイカーの腕にしがみついてしまった。
すぐに振り払われると思ったが意外にもストレイカーは彼女の手をそっと握っていた。
「さあ、仕事場に着いたよ、お嬢さん。」と開いた本部への入り口をその手で指し示したのだった。

本部の中でもマギーは隊員たちの好奇の目にさらされた。司令官はいつものクールな表情のままマギーを彼のオフィスへ案内した。そのあとをフォスターとフリーマンが続いた。
するとそこにはヘンダーソン長官とドクター・ジャクソンが待ち受けていた。

そして、司令官が改めてマギーを紹介すると長官はマユを大げさに上げ下げしながら、
「ところで中国人のお嬢ちゃん、英語はわかるのかね?」
と、皮肉たっぷりに最初の質問をした。

ずっと不安そうな顔をしていたマギーだったが、長官の言葉に
「ヘンダーソン長官の英語と同じくらいですわ。中国と日本の違いは聞き取れますから。」と切り返して見せた。

これは隣りで聞いていたドクター・ジャクソンに大いに受けたらしく、彼にしては珍しく声を出して笑った。
「一本取られましたな、長官。」
だが、ヘンダーソンは面白くない。
苦虫を噛み潰したような顔で
「ストレイカー!私は民間人、それもこんな子供をシャドーに入れるのは今でも反対だ!君が全ての責任を取ると断言したのでしぶしぶ賛成してやったのを忘れないでほしいものだ。」

ストレイカーも負けてはいなかった。
「長官。長官のヒアリングもどんなものでしょうかな?彼女は27歳。立派の大人の女性です。17歳じゃなくてね。」
さらに彼は続けた。
「この様子では、先日の定例会議での私の説明は耳に入っていなかったと見えますな。長官。もう一度言いますから、よく聞いてください。ポールとアレックにはまだ彼女の詳細を説明していなかったな。ちょうどいい機会だ。聞きたまえ。」

「ミス・マギー、27歳。独身。日本人。1980年度世界コンピューター技能コンテストにおいて最優秀賞受賞、つまり総合第一位を獲得した。まさにコン ピューターの申し子です。そこで、最近頻繁に不具合をおこすようになったシャドーのコンピューターをリフレッシュしてもらおうと招聘を決めました。」

「ふん、民間人の分際で。」
「エド、続けて。」ヘンダーソン長官が文句を言おうとしたのをフリーマン大佐がさえぎった。がぜん興味を持ったようだった。

だが、長官が
「もういいわい。コンピューターの素人には何を言われてもわからんからな。」
と言葉を吐き捨てるのを待っていたかのようにストレイカーは
「それでは具体例をお見せしましょう。」
といってヴィデオフォンのスイッチを押すと
「フォード大尉、アイーシャ、例のコンピューターを運んできてくれたまえ。」
と注文した。

まもなく同じ型のコンピューターが2台運ばれてきた。
「フォード大尉、彼女に工具を。」
マギーに工具を渡して戻ろうとしたフォード大尉をストレイカーが留めた。

「さて、この2つのコンピューターは1970年にシャドーに導入され、1978年までに2回ほどシャドーのコンピューター技師、カインド少尉によって修理 されている。今から、このコンピューターの性能、つまり仕事量を見てみることにする。何をさせればいいと思うかね?ポール?」

フォスターは首を横に振った。
「ドクター・ジャクソン?」
「えー、すなわち、たとえば、まったく同じデーターの分析を同時にさせればいいのではないかと。」
「うむ。さすがはジャクソン。で、具体的には?」
「………。」
「では、ミス・マギー。」
「あ、はい。円周率の計算はどうでしょう?」

「エンシュウリツとは??」
「あ、ごめんなさい。π(パイ)です。」
「よろしい。ではデータを入れてみよう。そして同時に答えさせる。いいかね。それでは、アレック。ポール。二人同時にこのボタンを押してくれたまえ。ワン、ツースリー!」

二台のコンピューターは同時に動き出し、3.14・・・と順調に数字を吐き出した。
ストレイカーは腕時計を顔の前にかざすと
「もうすぐ一分だ。もう一度このボタンを押して止めてくれたまえ。いいね。スリー、ツー、ワン。ストップ!」

二台のコンピューターがはじき出したデータテープはぴたりと同じ長さで、つまり同じ桁数をはじき出してとまった。」

「よろしい。では、マギー。右のコンピューターをヤッテくれないかね?」
そういうとストレイカーはマギーに「工具箱」を差し出した。
「は、はい。」
工具箱を受け取ろうとしたマギーに司令官は続けた。
「何分かかるかね?」
お互いに工具箱の端をもったまま綱引きのようになってしまった。
「7分。」
「6分でやってみたまえ。」
「は、はい。」
マギーは自らストップ・ウォッチのスイッチを押すと作業に取り掛かった。

最後の小さなネジをも丁寧にすばやくきちんと締め終わるとマギーは再びストップ・ウォッチを止めた。
時間を確認すると自分では時間を言わずにそれをストレイカーの目前に差し出した。
「5分57秒93。よろしい。」
ストレイカーはそのストップ・ウォッチを自分のポケットにしまうと
「ではもう一度、同時に計算させてみよう。」

結果は一目瞭然だった。
3倍、いや4倍近い桁数を『マギーのコンピューター』は弾き出したのだ。

「簡単に言えば、この速さでUFOを把捉できるようになるわけです。」
ストレイカーは大きな目をさらに大きくしてヘンダーソン長官を見た。

だが、口を開いたのはフリーマン大佐だった。
「これでシャドーのコンピューターはリフレッシュとバージョンアップを信じられない速さで行うことができるようになったわけだが、さて、エド。
彼女は民間人だ。なんの軍事的訓練も受けていない。もし、彼女が宇宙人のスパイに捕らえられて拷問を受けるようなことがあったら、シャドーは壊滅だぞ。」

フリーマンのオーストラリア訛りの言葉を聞いていた司令官だったが、それには答えずに、工具を工具箱に丁寧にしまっているマギーに声をかけた。

「今夜はどこに泊まるのかね?」
「チェリー・ホテルです。」
「やっぱり!」
ストレイカーより先にフリーマンがため息混じりに言った。
マギーが続けた。
「何日滞在するのかわからなかったので、ロンドンで一番安いホテルにしたのですが…。」

その言葉が終わるか終わらないうちに、ストレイカーはネジ回しを拾い上げると手の先でくるりと回し
「これから、マギーと私はチェリー・ホテルへ行ってくる。アレック、きみはどうするね?」
と、不敵な笑みを浮かべた。
「エド、もちろん行くとも。決まってるじゃないか。」
フリーマン大佐はこぶしで空中をヒットしながら
「久しぶりに腕がなるよ。ここ(本部)はポールに任せるとしよう。行こう、あの産業スパイ事件以来だな。」
と、いたずら小僧のような顔で笑った。

2台のガルウイングが夕暮れのロンドンを疾走して行った。

チェリーホテルの玄関には裸電球が1つ点いているだけだった。
ストレイカーに促されてマギーは一人でホテルに入っていった。

「おや、201号室のおじょうちゃん。おかえり。ディナーは3階のレストランへ行ってね。」

その言葉が終わるか終わらないうちにストレイカーがつかつかとフロントへ近づくと
「すまないね。このお嬢さんは私とディナーをとることになってね。今すぐチェックアウトをお願いするよ。」
そういって、201号室のカギをすばやく男の手から奪いとった。

「さあ、このお嬢さんの荷物をすべてここに持ってきたまえ。」
「へえ、ダンナ。これで全て…」
「全部といったろう?!」
ストレイカーが威圧的な声で言うと、フロントマンはピィーッっと口笛を吹いた。
すると奥から背の高い用心棒と思(おぼ)しき男が現れた。
と、同時にフリーマンもホテルに入ってくるが早いか用心棒に一撃を加えた。

決着はあっという間についた。

「バカなやつだ。おとなしく荷物を出せば今日の宿賃は払ってやろうと思っていたのに。」
あっけにとられているマギーにストレイカーは上着を整えながら尋ねた。
「これで君の荷物は全部かね?」
マギーが小さくうなずくと
「では、帰ろう。」
ストレイカーの言葉にフリーマンが反応した。
「どこへ帰るんだ?」
その問いには、シャドーカーの無線が答えた。
『UFOが接近中。ムーンベースが警戒態勢に入りました。非常事態。』

「帰るところが決まったようだな。」
ストレイカーは、「カギの壊された」スーツケースをマギーに渡しながら言った。
「マギー、君はどうするね?」
「お供いたしますわ、司令官。」
「よろしい。では帰ろうか。」

2台のガルウイングはもと来た道を再び疾走していった。



三人が司令部へ戻ったとき、モニターの画面いっぱいに映ったエリス中尉が2台のUFOがインターセプターによって跡形も無く追撃されたという報告をしていた。

「さあ、帰るとするか。今日は長い一日だったな。ポール。」フリーマン大佐は少し不満そうにフォスター大佐に言った。
「アレック。ボクは今夜は…その…。」
「なんだ?はっきりしないなぁ、ポール。そうか!今日はヴァージニアのところへ行くのか?彼女も今回の眠れる美女の件ではずいぶん苦労したからな。いたわってやれよ。」
白い歯を見せニンマリとしたフリーマン大佐は今度はストレイカーを誘ってきた。
「さて…と。それじゃあエド。今夜は二人でワインか?スコッチか?」
フリーマン大佐がそう司令官に言いかけたとき、ストレイカーは取り戻してきたマギーの旅行かばんを手にしていた。

「ミス・マギーは、私が預かることにした。いいね。マギー。私のところに来たまえ。」

ストレイカーの意外な答えにフリーマンとフォスターは顔を見合わせた。

「フリーマン大佐。明日朝9時からミス・マギーは作業開始だ。夜のうちに準備をしておいてくれたまえ。フォスター大佐。レイク大佐によろしく。明日はゆっくり来てもらって構わないと伝えてくれたまえ。」

そう早口に話した司令官は今度は少しゆっくり目に話しはじめた。

「ミス・マギー。シャドーのことについてひとつひとつ説明している時間が無いので、これから私のそばについていてくれたまえ。追い追い説明することになるだろう。さて、君の好物は何かな?途中で何か食べて帰ることにしよう。」

「ストレイカー、いいのか?」フリーマンはまだ懐疑的だった。
「ああ、アレック。彼女のことについては私が全面的に責任を持つということで国際惑星宇宙局の諮問委員会に承認してもらったのだからね。さ、ミス・マギー、行こうか?」

帰る途中、レストランに立ち寄ると二人は遅いディナーをとった。

そして、ストレイカーは本当に久しぶりに、マギーは初めてエドの家へ帰ったのだった。


次の日の朝、マギーはコーヒーの香りと『誰か』の鼻歌で目が覚めた。

急いで着替えて寝室のドアを開けると司令官がガウン姿でキッチンに立っていた。
「おはよう。ミス・マギー。目玉焼きがたった今、スクランブルエッグに変わったところだ。よかったかな?」
「おはようございます。司令官。」

「そうだ。ミス・マギー、アンダーグラウンド以外では私は司令官でなく専務だ。映画会社のね。…ベーコンはカリカリだよ。私の好みなんでね。」
「はぁ…、はい。」
マギーの頭の中の混乱を打ち破るかのようにトーストが2枚、勢いよくポップアップした。

「とにかく。食べてしまおう。また次に食べられるのはいつになるかわからないからね。」
「はい、専務…。」
マギーは、ストレイカーの『他の家族』について聞こうとしてやめた。
だが、彼にはその声に出さなかった質問が聞こえたようだ。

「私は10年ほど前に一度結婚したが、一方でシャドーの設立を秘密裏に進めなくてはならなくてね。とにかく忙しかったが、その理由を妻にも言うことはでき なかった。家庭を顧みないダメな夫として一年足らずで離婚してしまったよ。…息子が一人いたんだが…。このことはまたあとで話そう。さぁ、食べてしまった ら出かけるよ。」
そういってストレイカーはマギーのカップにもう一杯、コーヒーを注いだ。

シャドー本部へ向かう途中、マギーはシャドーカーの操作と装備についてその全ての説明を受けた。
「以上だ。」
そういって、ストレイカーは道端に車を止めると
「運転手の交代だ。国際免許は持っていたね。」
と、続けた。

「は、はぁ?」
「君のプロフィールは全てインプットされている。さあ、君に私の命を預けよう。」

マギーは運転席に座るとまず座席を思い切り前に引いた。
それからガルウイングのドアを閉めると確かめるようにエンジンをふかした。
車はすべるように走り出し、あっという間に「ハーリントン-ストレイカー 映画会社」の看板をすり抜け、玄関の前にぴたりと止まった。

エドもマギーもそこでフーッっとため息をついて顔を見合わせた。
「グッジョッブ、ミス・マギー。」
そして、その青い瞳でマギーの漆黒の瞳を見つめながら続けた。
「普段の通勤に使う君の車を紹介するから社員駐車場へ来たまえ。」

「君の車ですか?」
「そう。君のマイカーさ。」

ストレイカーはさっさと歩いていってしまうのでマギーはついていくのが精一杯だ。
さきほど、運転席を前にずらした分だけ彼とは「コンパス」が違うのだなあと痛感させられた。

駐車場へ着いたマギーは自分の目を疑った。
日本を発つとき空港においてきたはずの「君のマイカー」がそこにあったのだ。
「ス、ストレイカー専務、これは…?」
「夜の間に輸送機をちょっと寄り道させたんだ。車のカギを返しておこう。ゆうべのホテルの連中、本当に全部の荷物を返してくれて助かったよ。」

映画会社のロビーではフリーマンが二人を迎えた。
「アレック、ごくろう。」ストレイカーのねぎらいの言葉に大佐は
「で、どうだった?ディナーのお味は?」といたずらっぽい笑顔で答えた。

「ああ、帰る途中でレストランに寄ったよ。」
「彼女の味は?スシだったか?それともテンプラ?」
「アレック、夜勤明けだったな。早く帰りたまえ。」ストレイカーは少し迷惑そうに答えた。

「ストレイカー、長い付き合いだ。秘密はなしだぞ。」
「ああ、何もない。」

「わかったよ、エド。今日は帰るとするよ。」と、いって出口に向かいだしたフリーマンがもう一度少し戻ってくると言った。
「ミス・マギー。所属は小道具・衣装管理部だ。」
「えっ?!」

「そうか。わかったよ、アレック。あとで行ってみよう。」
それは表向きのマギーの職場だった。

「普段はこちらの身分証明書を使うことになっている。わかったね。」
ストレイカーから説明を受けると、マギーはオフィスの入り口でミス・イーランドから証明書を受け取った。

ストレイカーに付き従ってオフィスへと入っていくマギーの様子からミス・イーランドは二人の親密度が増しているのを見逃さなかった。

入り口のドアが閉まると、ストレイカーは例のシガレットケースを開かずにマギーに手渡すと言った。
「フリーマンがちゃんと仕事をしたかどうか確かめるときが来たようだ。この箱を開けて何か話してごらん。」

マギーは中味のタバコがこぼれないように気をつけながらフタを開けると「オギワラマリです。」と日本語で言ってみた。

『声紋チェック。ミス・マギーの声と認めます。』味気ないコンピューターの声が響き渡り、ガクンと足元がゆれたが、マギーはもう誰にもつかまることはなかった。

コンピューターがデータをはじき出している音がマギーを迎えた。

ここは地下深く秘密裡につくられた地球防衛組織シャドーの本部だ。

そしてストレイカー司令官のあとに続いてオフィスへ入ったマギーを理知的な美しい女性とフォスター大佐が迎えてくれた。

「ミス・マギー、レイク大佐とは?」
「初めてお目にかかります。レイク大佐。マギーと申します。」

差し出された手をレイク大佐は優しく握ると
「ヴァージニアと呼んで頂戴ね、マギー。」
そう答えた。

「では、ヴァージニア。マギーに例のファイルを。」
ストレイカーがそう促すと、ファイルを出したのはフォスターだった。
「フム、なかなかの連係プレーだ。」
そういうと司令官はそのシャドーのマークが入ったファイルの中味を点検しながら、いった。
「ミス・マギー、これが今日からの君のスケジュールだ。ヴァージニアが作成した。この通りなら2週間ということだが、10日でできるね?」
「10日ですって?」
声を上げたのはレイク大佐だった。

しかし、次に冷静なマギーの声がした。
「大丈夫です。一週間で。」

「な、なんですって?!」
マギーの『手際』を見ていないレイク大佐は信じられないといった様子だった。
そして、またなにか一言いおうとしたとき、コンピューター衛星シドの声がシャドー本部に響き渡った。
『UFOを発見。距離一千万キロ。グリーン…。』

それから4日間。

ストレイカーは一度も自宅へは戻らなかった。

マギーは毎日最初に決めたスケジュールどおりに仕事をこなしていた。
夜、家へ戻ると主(あるじ)のベッドで休み、朝はマイカーで出勤した。

5日目の朝、マギーはいつものようにベッドルームからリビングに出てくるとはっとした。

リビングのソファに主(あるじ)が服のまま眠っていたのだ。

微動だにせずぐっすりと眠るストレイカーの横顔を見つめながらこのままここで寝かせておこうか、ベッドが空いたことを伝えようかマギーは悩んでいた。

すると司令官のまぶたがわずかに動きブルーの瞳があいた。

「ミス・マギー。作業はどの位先に進んでいるかね?…そのスケジュールと比べて…。」
「えっ?」
ストレイカーは起き上がると上着を脱いでソファの背もたれにかけるともう一度聞いた。
「予定よりどの位“はかどっているか”ということだ。」
「ざっと3時間半です。」
「よろしい。では今日は1時間半ほど遅刻をしていくことになってもいいね。」
言い方は優しかったが、これは司令官としての命令に他ならなかった。

「来たまえ。君に見せたいものがある。」
「あ、でも私…。」
「大丈夫。パジャマにガウンで充分だ。」
そういうとストレイカーは寝室へと入っていった。

「さ、これだ。」
そういうとストレイカーは一番奥のクロゼットを開けた。

するとそこには古めかしいコンピューターが一台おいてあった。

「こ、これは68年製のタンブラー70EXですね。」
マギーは反射的にその名を口にした。
「そう。よくわかったね。さすがはコンピューターの女王だ。私が月に関する分析をしていた頃使っていた。あの頃はこれが最新型だった。」

マギーの漆黒の瞳がきらりと光った。
「動くんですか?」
「ああ。たぶん君なら。」
「触っても?」
「ご自由に。」

司令官の「ご自由に。」の言葉が終わるか終わらないうちにマギーは慣れた手つきでスイッチを入れるとカタカタと古いコンピューターを動かし始めた。
その様子をストレイカーは慈しむように見つめていた。

「何かデータが入ったままですね。」
「何だろう?」
「覚えていらっしゃらないのですか?」

「ああ。全て消したはずだが…。どれだね?」

「ここです。」
「ん?」
ストレイカーが古いコンピューターに顔を近づけると二人のほほが少し触れた。

「これかね?」
「は、はい…。」

「アウトプットできるかね?」
ストレイカーの青い瞳がぎょろりとマギーをにらんだ。

「やってみますか?」
「いますぐ。」
「いますぐ…。あ。アウトプット用のロール(紙)が切れていますわ。」
「そうか…。ここには置いていなかったな。」
「それでは明日のお楽しみ…ということですね。」

「う…ん…。」
ストレイカーは、がっかりした様子で彼には珍しいことだが未練がましく、スイッチを点けたり消したりした。

「あぁ、それを押したらかえってデータが取り出しにくくなってしまいますわ。えーっと、ここはこうして…。」
あわててコンピューターを制御するマギーの手と顔を交互に見ていたストレイカーは、またわざとヘンなスイッチを押した。

「これでどうかね?」

その子供のような様子を見てマギーはあきれた顔でストレイカーをにらんだ。
「エド。永遠にデータを見ることができなくなっても…。」
「そのときはコンピューターの女王にナントカしてもらうさ。」
そういってまた別のボタンを押した。

小さな古いコンピューターの前で大人が二人、朝早くからスイッチやボタンの押し合いをしているのだ。
だんだんとそれはエスカレートしていったが二人は満面の笑顔だった。

ついにストレイカーが1つのボタンを押したまま手を離さないでいるのでマギーがその手を剥がしにかかるとその手の上にまたストレイカーの手が重なった。そしてマギーがまたその上から手を乗せようとした瞬間、マギーは強い力でストレイカーの方に引き寄せられた。

「あ。」

マギーが小さい声をあげた時、彼女はストレイカーの腕の中に抱きしめられていた。
ちょっと前に感じたストレイカーのほほの感触が、今ははっきりと感じられる。
そしてそれは初めての出来事だったが、何故か懐かしい抱擁だった。

強く抱きしめられて身体が溶けてしまうのではないかと思ったマギーだったが、コンピューターの放つ音に、はっと我に返った。

「私…、そろそろ出かけないと…。」

その言葉にストレイカーは腕の力を少し弱めてマギーの顔をじっと見つめるとこう言った。

「今日は臨時休暇だ。」

「休暇ですって?!」
そう言おうとしたマギーの唇を彼の唇がふさいだ。


少しうとうとしていたマギーはリビングの電話の音で目が覚めた。
時計を見るとすでに夕方近くになっていた。
あれから何度も愛し合い、幾度となく絶頂に達した…。

はっと意識が戻った。
すると隣りで眠っていた人間がベッドからするりと抜け出して、リビングへ出て行った。

マギーもベッドから出ようとしてやめた。
なにも着ていなかったからだ。

電話を終えたストレイカーがやはりマギーと同じ姿でベッドルーム戻ってきた。

「第一防衛網が破られた。司令部へ行くよ。君は休んでいたまえ。」

「いえ。私もあとから行きます。今から行けば明日の朝までに今日の分は片付けられると思いますので。」

マギーの言葉をうなずきながら、そしてスーツを着ながら聞いていたストレイカーはもうすっかりシャドーの司令官に戻っていた。

「では、あとで。」

そう言うとガルウィングのエンジンの音を残して去っていった。

マギーも着替えるとすぐに「マイカー」であとを追った。
走りながら窓を全開にして外の風を入れた。まだ少し身体が火照っていたからだ。

「エドもこうしているかしら?」

地球が危機にさらされているというのに自分はこんなのんきなことを考えていて良いのかしら?と思いながら「ハーリントン-ストレイカー 映画会社」の社員駐車場にマイカーを止めた。

司令部へ降りていくと、さすがに皆な緊張して持ち場についていた。
非常事態を告げるレッドアラームが点いたままだ。
マギーが大遅刻をして来たことなど誰も気づいてはいなかった。

すぐに今日の分の遅れを取り戻しにかかったマギーだったが、コンピューター室の「司令部の重鎮」と呼ばれている一番古いコンピューターの前でもう2時間以上立ち往生していた。
こうなると非常事態は困ったものだ。誰もマギーを手伝うものはいなかった。

「…どうして、あなただけキーワードが違うの?…」

今日はやはりどうやっても予定より遅れる運命だったんだわ。
早いけど家に帰ってもうひとつの宿題を済ませよう。
そう考え直したマギーは、古いコンピューター用のロール紙を引っ張り出してくると、「マイカー」を飛ばして家に戻った。

そして今度は“タンブラー70EX”の前に立つと、僅かに残っていたデータをアウトプットし始めた。


ストレイカー司令官とマギーの初めての愛の営みを全て見ていた寝室の古いコンピューターの中には意外な物が残っていた。
それは10年以上も前にストレイカーが残したであろう「愛のメッセージ」だった。

 “お誕生日おめでとう、メリー。
      来年はミセス・ストレイカーと皆に呼ばれているかな?
                      君のエデイより。

マギーは、「ミセス・ストレイカー」と打たれたデータカードを見て悲しい気持ちが心の底から湧き上がってくるのを抑えることはできなかった。
彼には10年前、確かに愛した人がいたのだ。

もちろん、話は聞いていたが、それを形としてはっきり見せられるとやはり心穏やかではいられなかった。

「エディだって。」
自分が知らなかった昔のストレイカーの愛称が打たれた箇所を指ではじいたマギーは、はっとした。

「本部のコンピューターのキーワード、これかも知れない。」

マギーは、夜のロンドンを突っ走り司令部へ取って返すと「司令部の重鎮」の前にすわった。

「キーワードを入れてください。」

“エディ・ラヴス・メリー”と、インプットしてみた。

カチン!カシャカシャ…。重鎮は見事にパスワードを受け入れ、マギーは仕事をはじめることができた。

だが、マギーは心の奥がズキリと痛むのを感じていた。悲しい気持ちがさざ波のようにそこから体中に広がり嗚咽となってのどからあふれて来そうになるのだ。
ちょっとでもコンピューターを直す手を止めたらきっとこの場に泣き崩れてしまうだろうと思いながら作業を続けていた。

私はおかしい。なぜこんなことで泣いてしまうの?
パスワードは10年以上も前のことじゃない?!
司令官と私が出会うずっと前の話よ。

「誰もこんなことは覚えていないわ。」とマギーは日本語で口に出して言ってみた。

「司令部の重鎮」は古いデータを吐き出し、マギーの的確な処理に素直に答えていた。普段なら鼻歌のひとつも出るスムーズな作業だ。
新しい回路を組み込んですっかりリフレッシュした重鎮は最後にまたマギーに難問を出した。

「新しいパスワードを設定してください。」

再び“エディ・ラヴス・メリー”と入れるべきだろうか?

“マギー・ラヴス・コマンダー・S”と入れたい衝動に駆られながら、
マギーは「空白」と入れて作業を終えた。

マギーが重鎮と呼ばれているシャドー本部で一番古いコンピューターのリフレッシュ作業を終えて、リポートを書き込んでいる時、コンピューター室のドアがノックされた。

「はい。」マギーが返事をするとドクター・ジャクソンとフリーマン大佐が入ってきた。

「作業は順調かね?」
「えぇ、ジャクソン先生。最後のコンピューターで少し遅れてしまいました。」
「そう?…でもおおむね予定通りに進んでいるようだね。」
ドクター・ジャクソンとフリーマン大佐は交互にコンピューターを覗きながらあごに手を当てて言った。
「眠っていないんじゃないのか?マギー。顔色が悪いぞ。」
「あら、顔が黄色いのはデントウですわ。アレック。」
「そりゃ、デントウじゃなくて遺伝だよ、マギー。」
「あっ、失敗失敗。」

三人でしばし笑いあったあとでドクター・ジャクソンが言った。

「明日、全部の作業が終わったら医務室へ来て欲しいのです。」
「私、何か病気かしら?」

「いやいや。先日の血液検査の結果、少し貧血気味と出たのでね。注射を一本打ちたいと思っているのだよ。マギー。」

「あぁ、そうでしたか?わかりました、ドクター。わざわざ有難うございました。」

「終わったら必ずね。」
そういい残すと二人は去っていった。


明日の最終点検作業だけを残してマギーは家に帰った。

相変わらず主(あるじ)のいない部屋はしんと静まり返っていた。
「レコードでもかけようかな。」

『ニニロッソ』と書かれた古そうなLPをかけると、トランペットの音が部屋中に響き渡った。

その中でマギーは最終レポートのタイプを打ち始めた。A面からB面に裏返して少し経ったとき、突然ガルウイングのエンジンの音がして玄関先に車が一台止まったかと思うと、この家の主が帰ってきた。

「おかえりなさい。」
司令官の上着とブリーフケースを受け取ったマギーにただいまのキスをするとストレイカーは言った。
「きょう、ドクター・ジャクソンから何か言われただろう?」

「えぇ。」
「なんて?」
「貧血を治す薬を注射するって…。」

マギーのその言葉を聞いたストレイカーの表情が険しくなった。

「エド…?私、何か…。」
だが、ストレイカーは何も言わずに硬い表情のままマギーを抱きしめるのだった。
「エ…ド…。」

「明日、仕事が終わったらジャクソンのところへ行く前に、まず私のところへ報告に来たまえ。わかったね。」
「はい…。」

「決してジャクソンのところへ先に行ってはいけないよ。」
「はい…。」

その夜のストレイカーはベッドの中でも昨日と少し違っていた。
「君が私を忘れても私は君を忘れない。」
と、繰り返すのだった。

まだ夜が明け切らないうちにストレイカーはヘンダーソン長官のオフィスへ行くと言って部屋を出て行った。
新しい作戦のためにまた莫大な予算を要求することになったと言っていたが、他にも理由がありそうだった。

マギーはいつも通りに一人でシャドー本部へ「通勤」するとコンピューターを一台ずつ丁寧に点検していった。
この中のどれか一台でも不具合を起こせば人類の滅亡に繋がりかねないと思うと身の引き締まる思いがした。

点検作業は順調に進んだが、マギーはまた「シャドーの重鎮」の前でじっと動かなくなってしまった。

このコンピューターの点検を終えると全ての作業が終わる。
その前にストレイカーがシャドーに戻っているかどうか確認しておきたかったのだ。

重鎮の前でマギーが小さなため息をついた時、フォスター大佐がコンピューター室へ入ってきた。
「マギー、ドクター・ジャクソンが捜していたよ。そろそろ作業が全部終わる頃だといってね。」

「えぇ、ポール。あとこれ一台よ。古い型だから手間取ってしまって…。あと、司令官はどこにいらっしゃるか知らない?」
「司令官?彼ならヘンダーソン長官のオフィスだよ。」
「私、司令官に言われたんです。ドクター・ジャクソンのところへ行く前にまず自分のところへ来るようにって。」

「そう…。理由は聞いた?」
マギーは首を横に振った。
「じゃ、長官のところへ行ってみようか。点検は?」
「すぐに終るわ、ポール。」
言うが早いか、マギーは「重鎮」に仮のデータを打ち込むと理想の回答を得て全てを終了した。

「終わり?」
「はい…。」
「古い型で手間取るって言わなかった?」
「ワタシ、エイゴ、マチガエマシタ。」
「そう。」
フォスター大佐はニヤリと笑うと
「さ、司令官の所へ送って行くよ。」
と、ドアボーイのようにドアを開け「おじぎ」をした。

見覚えのあるガルウィングの隣りにフォスターは車を止めた。

彼は車にマギーを残して行くと、長官の秘書に司令官に会いたいと伝えた。
まもなく少し疲れた様子の司令官が会議室から出てきた。

「フォスター、何かね?わざわざ来るとは…。」
「司令官に会いたいという人を連れてきたんですよ。エド。車で待っています。」

ストレイカーが外へ出て行ったのと同時に長官が出てきて言った。
「フォスター、ストレイカーをわざわざ呼び出した理由を言え。」
「ミス・マギーが全ての作業を終えたそうです。」

「ふん。そうか。で、もう彼女の記憶を無くす処置はしたんだろうな。」
「もうすぐジャクソンが注射をするでしょう。」
「まだか?!何を手間取っているんだ?」

「長官、あなたは一時でも愛した人の記憶が失われてしまうとしたらどうしますか?」
「愛した人の記憶だと?ふん。確か君は、月の石を拾ってる民間人の女やら、UFOに兄貴を誘拐された牧場の妹やら…いろいろとあったようだが、今度は誰の記憶が…?ん?ま、まさか…。あの生意気な中国人…?!」
「そうです。」
「ふん!君もまた物好きな…。」
「僕じゃありません。」
「ん?じゃあ誰だ。その物好きは?」
「……。」
フォスターは黙ったままだ。

「おいっ!フォスター!ま、まさかストレイカーが…?!」


フォスター・カーの中でマギーはこれからのことを考えていた。
すると司令官が窓をノックした。

マギーがガルウィングのドアを開けると、すばやく運転席に滑り込んだ。
「マギー、君に話しておきたいことがある。」
ストレイカーはそう切り出した。
だが、意外にもマギーの返事は
「私、忘れませんから。」だった。

「き、聞いたのか?フォスターから。」
「いえ。彼から聞いたのは彼の昔のコイバナですわ。ムーンベースとホットラインを結んだとか。」

「そうか…。」
「エド、昨夜から悩んでいたのは、このことだったのね。」
「あぁ…。」

ストレイカーは車の窓を開けるとタバコを取り出して一息ついた。
「だが、もう策は打ってある。フォスターと司令部へ帰ってドクター・ジャクソンの処置を受けたまえ。」
「えっ?!」
「私を信じてくれるね?」
マギーを見つめるブルーの瞳にうそはなかった。

「わかりました。司令官。」
ストレイカーは車を出ると、後ろを振り向くことなくオフィースへと戻っていった。

入れ替わりにフォスターが出てきて二人はシャドー司令部へと戻っていった。

マギーは医務室の長いすに横になると、ドクター・ジャクソンから左腕に注射を受けた。



マギーは電話の音で目が覚めた。
だが、出る前にそれは切れてしまった。

窓のカーテンは閉められていたが、隙間から陽の光が射していた。

頭がまだぼんやりとしていたが、自分が今いる場所が自宅でないことはわかった。
カーテンを開けると外の景色からここが超高層ビルの上のほうだということがわかった。

『ロイヤル・グランド プリンセス・ホテル?ロンドン』

豪華な装飾を施した鏡台の前においてあるメモパッドにはそう印刷されていた。
「そっか。ここはイギリスのロンドンか。」

シングルルームではあったが、天蓋付きのゴージャスなダブルベッドに高級な調度品が並んでいる豪華な部屋だった。

そうだ、確かコンピューターの不具合の調整とリカバリーを依頼されていたのよねぇ。
「え?っと。」

マギーは、ブリーフケースに入っている書類を抜き出して見た。

「『ハーリントン-ストレイカー 映画会社』か。…エスタブリッシュ1970年。ふっ、10年もたっていたら古くなって当然よね。なになに『ご来社の際は エド・ストレイカー専務に必ず面会してください。』か。どんなジイ様かしら?お金持ちらしいけど。話のわかる人だといいなぁ。」

シャワーを浴びて、支度を整えるとマギーは映画会社へと向かっていった。

(THE END)


--------------------------

2009年 07月14日 09時52分
1980年。人類はすでに地球防衛組織シャドーを結成していた。そのシャドーに日本人女性のコンピューター技師が招かれた。ストレイカー司令官と彼女はお互いに惹かれあうものを感じるのであった。

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